釜無山石灰岩地帯 その3

スグリ。好石灰岩植物 日本固有種。2021年6月17日 釜無山
釜無山の石灰岩地帯を歩きました。釜無山の周辺の山などを含めるとシダの観察は4回目になります。今回は一部未調査の範囲を歩きました。紹介するシダ以外にナヨシダ、オウレンシダ、クモノスシダ、コタニワタリ、タカネサトメシダ、ミヤマシダ、オシダ、シラネワラビ、ツルデンダ、イワシロイノデ、ホソイノデなどが見られました。




イッポンワラビ Athyrium crenulatoserrulatum
メシダ科 メシダ属

標高1300~1600m、釜無山中腹部で観察(1300m以下でも生育していると思われるが歩いていない)。ウエットな谷筋の樹林下林床に普通に生育。

ウエットな谷筋の樹林下林床に生育するイッポンワラビ。2021年6月17日 釜無山 
ウエットな谷筋の樹林下林床に生育するイッポンワラビ

樹林下林床に群生するイッポンワラビ。2021年6月17日 釜無山 イッポンワラビ、葉身。2021年6月17日 釜無山 
(1)樹林下林床に群生するイッポンワラビ
(2)イッポンワラビ、葉身 

イッポンワラビ、葉柄下部には淡褐色・膜質の鱗片をつける。2021年6月17日 釜無山 イッポンワラビ、葉柄下部には淡褐色・膜質の鱗片をつける。2021年6月17日 釜無山 
(1)(2)イッポンワラビ、葉柄

イッポンワラビ、中軸と羽片の接点は赤みを帯びることがある。2021年6月17日 釜無山 
イッポンワラビ、葉柄および中軸

イッポンワラビ、中軸と羽片基部の接点に生える鱗片。2021年6月17日 釜無山 イッポンワラビ、中軸と羽片基部の接点に生える鱗片は多肉質になることがある。2021年6月17日 釜無山 
(1)(2)イッポンワラビ、中軸と羽軸の接点

イッポンワラビ、葉身下部の羽片では基部は徐々に狭まる。2021年6月17日 釜無山 
(1)(2)イッポンワラビ、羽片

イッポンワラビ、胞子嚢群。2021年6月17日 釜無山 イッポンワラビ、胞子嚢群は楕円形~円形で包膜はない。2021年6月17日 釜無山 
(1)(2)イッポンワラビ、胞子嚢群 




ウスゲミヤマシケシダ Deparia pycnosora var. mucilagina
メシダ科 シケシダ属

1500m付近の明るい谷筋に生育していました。やや標高の低いところではハクモウイノデも見られました。

明るい谷筋に生育するウスゲミヤマシケシダ。2021年6月17日 釜無山 
明るい谷筋に生育するウスゲミヤマシケシダ

ウスゲミヤマシケシダ、葉柄基部は粘液に包まれる。2021年6月17日 釜無山 
ウスゲミヤマシケシダ、葉柄基部




ミヤマシダ Diplazium sibiricum var. glabrum
メシダ科 ノコギリシダ属

釜無山中腹部~上部にかけて、樹林内では広くみられる。
葉柄には黒褐色・光沢のある鱗片が密につく。葉は鮮緑色~濃緑色。3回羽状に分かれる。包膜は小羽片や裂片の中肋寄りで包膜の辺縁には多少鋸歯がある。

標本1
針葉樹林下、オシダの群生地の中に生育するミヤマシダ。2021年6月15日 釜無山 
針葉樹林下、オシダの群生地の中に生育するミヤマシダ

ミヤマシダ、葉柄下部の鱗片。2021年6月15日 釜無山 
(1)ミヤマシダ、葉柄下部の鱗片

ミヤマシダ胞子嚢群、包膜には鋸歯がある。2021年6月15日 釜無山 ミヤマシダ、裂片の葉脈は樹状。2021年6月15日 釜無山 
(1)ミヤマシダ、胞子嚢群
(2)ミヤマシダ、裂片の葉脈



標本2
石灰岩地帯、針葉樹林下に生育するミヤマシダ。2021年6月15日 釜無山 
(1)石灰岩地帯、針葉樹林下に生育するミヤマシダ

ミヤマシダ、葉柄下部の鱗片。2021年6月15日 釜無山 ミヤマシダ胞子嚢群。裂片の葉脈は樹状。2021年6月15日 釜無山 
(1)ミヤマシダ、葉柄下部の鱗片
(2)ミヤマシダ、胞子嚢群および裂片の葉脈




カマナシミヤマシダ:仮称(包膜の辺縁が和紙を裂いたようにほつれる)
キタノミヤマシダ無毛typeかあるいはキタノミヤマシダとミヤマシダの雑種か

メシダ科 ノコギリシダ属

林縁の沢沿い。ウエットな斜面に生育。ミヤマシダよりも標高(およそ1800m以上)が高くなおかつ石灰岩地帯で観察。
観察されたシダは、ミヤマシダに比べ葉は①黄緑色。②小羽片は葉脈に沿ってやや窪み、長さの割に幅が広い。③裂片の辺縁には鋸歯がある。④包膜の辺縁は和紙を裂いたようにほつれる。ミヤマシダに似ているところは葉の裏側に毛が生えていない。
以前北岳で観察したキタノミヤマシダも葉の裏側の毛は生えていなかった。

石灰岩地帯に生育するカマナシミヤマシダ(仮称)。2021年6月15日 釜無山 
石灰岩地帯に生育するカマナシミヤマシダ(仮称)

石灰岩地帯に生育するカマナシミヤマシダ(仮称)。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、葉身。2021年6月15日 釜無山 
(1)カマナシミヤマシダ(仮称)
(2)カマナシミヤマシダ(仮称)、葉身

カマナシミヤマシダ(仮称)、葉柄下部の鱗片。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、葉柄下部の鱗片。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、葉柄下部の鱗片。2021年6月15日 釜無山 
(1)(2)(3)カマナシミヤマシダ(仮称)、葉柄下部の鱗片

カマナシミヤマシダ(仮称)、最下羽片。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、最下羽片。2021年6月15日 釜無山 
(1)(2)最下羽片

カマナシミヤマシダ(仮称)、最下羽片基部。2021年6月15日 釜無山 
(2)最下羽片基部

カマナシミヤマシダ(仮称)、小羽片。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、小羽片。2021年6月15日 釜無山 
(1)(2)小羽片

カマナシミヤマシダ(仮称)、羽片裏側。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、胞子嚢群。2021年6月15日 釜無山 
(1)カマナシミヤマシダ(仮称)、羽片裏側
(2)カマナシミヤマシダ(仮称)、胞子嚢群

カマナシミヤマシダ(仮称)、包膜。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、包膜。2021年6月15日 釜無山 
(1)(2)カマナシミヤマシダ(仮称)、包膜

カマナシミヤマシダ(仮称)、裂片の脈。2021年6月15日 釜無山 カマナシミヤマシダ(仮称)、裂片の脈。2021年6月15日 釜無山 
(1)(2)カマナシミヤマシダ(仮称)、裂片の脈




ミヤマベニシダ Dryopteris monticola
オシダ科 オシダ属

カラマツなどの樹林下に群生あるいは散在して生育していました。

カラマツ林林床に生育するミヤマベニシダ。2021年6月17日 釜無山 
カラマツ林林床に生育するミヤマベニシダ

ミヤマベニシダ、葉柄下部の鱗片。2021年6月17日 釜無山 ミヤマベニシダ、葉身。2021年6月17日 釜無山 
(1)ミヤマベニシダ、葉柄下部の鱗片
(2)ミヤマベニシダ、葉身

ミヤマベニシダ、胞子嚢群。2021年6月17日 釜無山 ミヤマベニシダ、包膜。2021年6月17日 釜無山 
(1)ミヤマベニシダ、胞子嚢群
(2)ミヤマベニシダ、包膜




イワカゲワラビ Dryopteris laeta
オシダ科 オシダ属

高地の石灰岩地帯の樹林下に生育。釜無山には広く石灰岩地帯が広がり生育範囲も大変広く個体数も多い。石灰岩地帯以外では観察されない。明るい樹林下の大規模な群生地や林縁などに散在して広く生育する。釜無山の石灰岩地帯ではオシダやミヤマベニシダ、シラネワラビ、ミヤマシダなどよりも優勢種であった。
 葉は光沢の乏しい淡緑色、外観は3回羽状に細かく分かれ大きなメシダ属を思わせるが、裏返して包膜を見ると円腎形でオシダ属であることにすぐに気づく。葉柄~中軸には膜質・淡褐色の鱗片が貼りつくようにつく。最下羽片の小羽片は上先につくことが多い。胞子嚢群は中肋寄りにつき、包膜の辺縁には鋸歯がある。

石灰岩地帯に生育するイワカゲワラビ。2021年6月17日 釜無山 
石灰岩地帯に生育するイワカゲワラビ

明るい林床に広く群生するイワカゲワラビ。2021年6月17日 釜無山 樹林内に生育するイワカゲワラビ。2021年6月17日 釜無山
(1)明るい林床に広く群生するイワカゲワラビ 
(2)樹林内に生育するイワカゲワラビ

イワカゲワラビ、葉柄。2021年6月17日 釜無山 イワカゲワラビ、葉柄の鱗片。2021年6月17日 釜無山 
(1)イワカゲワラビ、葉柄
(2)イワカゲワラビ、葉柄の鱗片

イワカゲワラビ、中軸。2021年6月17日 釜無山 イワカゲワラビ、中軸の鱗片。2021年6月17日 釜無山 
(1)イワカゲワラビ、中軸
(2)イワカゲワラビ、中軸の鱗片

イワカゲワラビ、葉身。2021年6月17日 釜無山 イワカゲワラビ、最下羽片。2021年6月17日 釜無山 
(1)イワカゲワラビ、葉身
(2)イワカゲワラビ、最下羽片

イワカゲワラビ、羽片。2021年6月17日 釜無山 イワカゲワラビ、小羽片。2021年6月17日 釜無山 
(1)イワカゲワラビ、羽片
(2)イワカゲワラビ、小羽片

イワカゲワラビ、葉身裏側。2021年6月17日 釜無山 イワカゲワラビ、羽片裏側。2021年6月17日 釜無山 
(1)(2)イワカゲワラビ、葉身裏側

イワカゲワラビ、葉身裏側。2021年6月17日 釜無山 イワカゲワラビ、羽片裏側。2021年6月17日 釜無山 
(1)(2)イワカゲワラビ、葉身裏側

イワカゲワラビ、包膜。2021年6月15日 釜無山 イワカゲワラビ、包膜。2021年6月15日 釜無山 
(1)(2)イワカゲワラビ、包膜

オシダの群生地。2021年6月15日 釜無山 オシダ群生地のシラネワラビ。2021年6月15日 釜無山 
(1)(2)オシダやシラネワラビとはあまり混生していない




エゾデンダか Polypodium sibiricum
ウラボシ科 エゾデンダ属

日陰の岩壁に生育。
日陰の岩壁に生育するエゾデンダか。2021年6月17日 釜無山 
日陰の岩壁に生育するエゾデンダか

エゾデンダか、乾燥しても葉はあまり巻かない。2021年6月17日 釜無山 
エゾデンダか、乾燥しても葉はあまり巻かない




オシャグジデンダ Polypodium fauriei
ウラボシ科 エゾデンダ属

やや明るい岩壁に生育。この季節、葉は枯れ始めていた。
葉が枯れ始めているオシャグジデンダ。2021年6月17日 釜無山 
葉が枯れ始めているオシャグジデンダ

オシャグジデンダ、葉身。2021年6月17日 釜無山 オシャグジデンダ、乾燥すると葉が巻く。2021年6月17日 釜無山
(1)オシャグジデンダ、葉身
(2)乾燥すると葉が巻くオシャグジデンダ





石灰岩地帯で見られた花など

石灰岩上に生育シロバナニシキウツギ<del>ウコンウツギか</del>。2021年6月17日 釜無山 シロバナニシキウツギ<del>ウコンウツギか</del>。2021年6月17日 釜無山
(1)石灰岩上に生育するシロバナニシキウツギウコンウツギか
(2)シロバナニシキウツギウコンウツギか
※詳しい方に教えていただき訂正いたします。2021年6月28日

石灰岩上に生育バイカウツギ。2021年6月17日 釜無山 バイカウツギ。2021年6月17日 釜無山
(1)石灰岩上に生育バイカウツギ
(2)バイカウツギ

石灰岩上に生育するヒメウツギ。2021年6月17日 釜無山 ヒメウツギ。2021年6月17日 釜無山
(1)石灰岩上に生育するヒメウツギ
(2)ヒメウツギ

イワシモツケ<del>イブキシモツケか</del>、石灰岩上に生育。2021年6月17日 釜無山 イワシモツケ<del>イブキシモツケか</del>。2021年6月17日 釜無山
(1)石灰岩上に生育するイワシモツケイブキシモツケか
(2)イワシモツケイブキシモツケか
※詳しい方に教えていただき訂正いたします。2021年6月28日

樹高2m程度のスグリ、日本固有種。2021年6月17日 釜無山 石灰岩上に着生するスグリとバイカウツギ。2021年6月17日 釜無山
(1)日本固有種のスグリ(樹高2m程度)
(2)石灰岩上に着生するスグリとバイカウツギ

スグリ、葉の基部の棘は2~3本、西洋スグリの棘は1本。2021年6月17日 釜無山 スグリの実、西洋スグリ(グーズベリー)に似るが楕円形、熟すと紅色を帯びる。2021年6月17日 釜無山
(1)スグリ、葉の基部の棘
(2)スグリの実

カラマツ林のウエットな林床に生育するヒメムヨウラン。2021年6月17日 釜無山 逆さを向くヒメムヨウランの花。2021年6月17日 釜無山
(1)カラマツ林のウエットな林床に生育するヒメムヨウラン
(2)逆さを向くヒメムヨウランの花

イボタヒョウタンボク<del>ヒョウタンボク</del>。2021年6月17日 釜無山 イボタヒョウタンボク<del>ヒョウタンボク</del>の花。2021年6月17日 釜無山
(1)(2)イボタヒョウタンボクヒョウタンボク
※詳しい方に教えていただき訂正いたします。2021年6月28日

石灰岩地帯。ある程度の標高でクロカンバが多くなる。2021年6月17日 釜無山 クロカンバの実。2021年6月17日 釜無山
(1)(2)クロカンバ

切り立った石灰岩の岩壁に生育するタカネバラ。2021年6月17日 釜無山 タカネバラ。2021年6月17日 釜無山
(1)(2)切り立った石灰岩の岩壁に生育するタカネバラ

石灰岩上に生育するツクバネ。2021年6月17日 釜無山 ツクバネの実。2021年6月17日 釜無山
(1)(2)石灰岩上に生育するツクバネ

石灰岩地帯の沢沿いに生育する上に生育するタチカメバソウ。2021年6月17日 釜無山 タチカメバソウの花。2021年6月17日 釜無山
(1)(2)タチカメバソウ

樹林帯のウエットな谷筋に生育するサワルリソウ。2021年6月17日 釜無山 サワルリソウの花。2021年6月17日 釜無山
(1)(2)サワルリソウ

林道沿いに生育する帰化植物(コウリンタンポポ)。2021年6月17日 釜無山 林道沿いに生育する帰化植物(       )。2021年6月17日 釜無山
(1)林道沿いに生育する帰化植物(コウリンタンポポ)
(2)林道沿いに生育する帰化植物(ハイコウリンタンポポ)

針葉樹林下の沢沿いに生育するクリンソウ。2021年6月17日 釜無山 ミヤママタタビの花。2021年6月17日 釜無山
(1)針葉樹林下の沢沿いに生育するクリンソウ
(2)ミヤママタタビの花

林縁の明るい草地に生育するハタザオ。2021年6月17日 釜無山
林縁の明るい草地に生育するハタザオ

ハタザオ、葉の縁には鋸歯がある。2021年6月17日 釜無山 ハタザオ、花。2021年6月17日 釜無山
(1)ハタザオ、葉の縁には鋸歯
(2)ハタザオ、花

林内の岩場に生育するヤマハタザオ。2021年6月17日 釜無山 
(1)林内の岩場に生育するヤマハタザオ

ヤマハタザオ、葉柄基部のロゼット状に葉を広げる。2021年6月17日 釜無山 ヤマハタザオ、葉の辺縁には鋸歯がある。2021年6月17日 釜無山
(1)林内の岩場に生育するヤマハタザオ
(2)ヤマハタザオ、葉の辺縁の鋸歯

明るい林縁に生育するキバナハタザオ。2021年6月17日 釜無山 
(1)明るい林縁に生育するキバナハタザオ

キバナハタザオに卵を産むスジグロチョウ。2021年6月17日 釜無山 キバナハタザオ、葉の辺縁は鋸歯縁。2021年6月17日 釜無山
(1)キバナハタザオに卵を産むスジグロチョウ
(2)キバナハタザオ、葉の辺縁は鋸歯縁