駒津峰(標高2752m)から見た甲斐駒ヶ岳山頂(南面)。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
甲斐駒ヶ岳の上部森林限界付近(カイコマキレハショウマの生育地)

2023年7月26日に甲斐駒ヶ岳で発見された植物を確認する目的で登山しました。発見された方から生育地点を教えていただき確認することができました。今回、花の一部を顕微鏡で観察しヤマブキショウマ属の仲間であると確認することができました。

カイコマキレハショウマ(仮称)バラ科 ヤマブキショウマ属 Aruncus

 2023年7月26日、甲斐駒ヶ岳摩利支天付近で発見される。発見者は伊那市在住の方です。伊那市周辺で長く植物の調査・観察を続けてこられた方です。

 今回、甲斐駒ヶ岳の生育地点を教えていただき確認することができたました。生育場所は甲斐駒ヶ岳山頂近く花崗岩地帯の険しいザレ場。周辺はハイマツやチョウジコメツツジコメツツジなどの丈の低い灌木が急傾斜地に根を張り点在する。その1つの灌木の茂みの中に一緒に生育。成株が3~4株、幼株が1株生育。もっと生えているのではないかと思われますが周辺を探すも他には見つからず。現地は甲斐駒ヶ岳の山頂近くで、季節による気温の変化が激しく常に強風に晒され急斜面で上部からの岩などの崩落あるいは激しい降雨の影響でザレ場が丸ごと削り取られる可能性が十分に考えられるところです。このままではいずれ観察できなくなる恐れがあり保護する手立てが必要と思われます。

 地上からの高さは30~40㎝。3回3出葉の長さは10~15㎝、幅は8~13㎝。茎の太さは1.5~2.5㎜。葉柄は葉と同長~やや短い。葉柄は淡緑色~紅色。最終小葉の基部が中肋まで切れ込んで3回3出葉のになる。葉の表面には粗い毛がはえる。小葉や最終小葉はやや内曲(鎌曲)し先端は鋭く尖り辺縁には鋭い鋸歯がある。花序は2回枝分かれし白~クリーム色の小さな花をつける。雄しべは20本前後あり花びらより長く伸びる。花の中央には先端に紅色の柱頭を持つ心皮が3個確認される。花はヤマブキショウマの雄株の雄花に似ている。観察されたカイコマキレハショウマ(仮称)も同様に雄株の雄花かもしれない。ただ、この心皮は雄花に残る退化した心皮の名残ではないかと考えられる。実際に種子ができるか確認したいところであるが、なかなか再度赴くことが難しい。雌雄異株か雌雄同種かは今のところ不明。

 カイコマキレハショウマ(仮称)によく似た3回3出葉のヤマブキショウマ属には済州島に自生するAruncus arthusifolius(タンナショウマ)があります(正式な学名:Aruncus dioicus (Walter) Fernald var. aethusifolius (H.Lev.) H.Hara)。違いは①小形(カイコマキレハショウマの1/3程度)で地上からの高さは20~25㎝、葉は7~10㎝。葉柄や花をつける柄は華奢で1mm程度。②小葉はあまり内曲(鎌曲)しない。③花序は1回枝分かれする。比較のために栽培しているAruncus arthusifolius(タンナショウマ)は種をつけており雌雄同種と思われます。

 なおネットで調べると記録だけですがキレハヤマブキショウマの記載があります(形態・生育場所は不明)。これがどのような形をしているかわかりませんが、カイコマキレハショウマ(仮称)と関係があるかもしれません。

※キレハヤマブキショウマについて
学名:Aruncus dioicus (Walter) Fernald var. kamtschaticus (Maxim.) H.Hara f. laciniatus (H.Hara) H.Ikeda
カイコマキレハショウマの発見者の方がお知り合いの方を通してキレハヤマブキショウマについての論文を入手されました。論文を調べ、見つけていただいた方に感謝いたします。
キレハヤマブキショウマについては以下の論文に記載があります。
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Observationes ad Plantas Asiae Orientalis. (I)



花崗岩のザレ場に生育するカイコマキレハショウマ(仮称)。天気の変化が激しくすぐにガスってくる。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
花崗岩のザレ場に生育するチョウジコメツツジの茂みに一緒に生えるカイコマキレハショウマ(仮称)

花崗岩のザレ場に生育するカイコマキレハショウマ(仮称)2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
花崗岩のザレ場に生育するチョウジコメツツジの茂みに一緒に生えるカイコマキレハショウマ(仮称)

カイコマキレハショウマ(仮称)の葉は3回3出葉。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)の葉は3回3出葉。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②カイコマキレハショウマ(仮称)3回3出葉の葉

カイコマキレハショウマ(仮称)小葉。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)小葉裏側。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①カイコマキレハショウマ(仮称)小葉
②カイコマキレハショウマ(仮称)小葉裏側

カイコマキレハショウマ(仮称)最終小葉、葉の表面には粗い毛が生える。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)最終小葉裏側。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①カイコマキレハショウマ(仮称)最終小葉
②カイコマキレハショウマ(仮称)最終小葉裏側

カイコマキレハショウマ(仮称)地表近くの茎。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)花をつける茎には細かい毛が生える。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①カイコマキレハショウマ(仮称)地表近くの茎
②カイコマキレハショウマ(仮称)花を手ける茎の毛

カイコマキレハショウマ(仮称)花序。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)花序。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②カイコマキレハショウマ(仮称)花序

カイコマキレハショウマ(仮称)花。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)花。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 
①②カイコマキレハショウマ(仮称)花

カイコマキレハショウマ(仮称)花。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)雄蕊は20本程度。花の中央に紅色の柱頭が見える。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①カイコマキレハショウマ(仮称)花つぼみ
②カイコマキレハショウマ(仮称)花のつくり

カイコマキレハショウマ(仮称)20個程度の雄蕊と3個の心皮。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 カイコマキレハショウマ(仮称)3個の心皮。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①カイコマキレハショウマ(仮称)20個程度の雄蕊と3個の心皮
②カイコマキレハショウマ(仮称)3個の心皮(拡大)