
伊豆大仙山から奈古谷の山を歩きました。大仙山の西側には大きな岩壁がありこの辺りの岩峰に特有のウバメガシ林が形成されています。シダの仲間はイタチシダの仲間が多く、サイゴクベニシダも多く目にしました。奈古谷は緑豊かな森が広がっていました。寒さと日が傾いたことで途中で退却。続きはいつか歩きたいと思います。
イワヒバ科 イワヒバ属
・イワヒバ Selaginella tamariscina
切り立った岩壁に群生していた。しばらく雨が降っていないせいか、葉は丸まっていた。
・タチクラマゴケ Selaginella remotifolia
道路わきの日当たりのよい土手に生育。葉は紅葉していた。葉は非対称の卵形で先は尖り、反り返ることがある。

林縁の土手に生育するタチクラマゴケ
・ヒメクラマゴケ Selaginella heterostachys
林内の日陰の切り立った崖に生育。今回は明るい林縁の明るい土手でも観察、葉の先は円頭。タチクラマゴケ(上の写真)と隣り合わせで生育していた。

林縁の土手に生育するヒメクラマゴケ(わずかにタチクラマゴケも写っている)
・イヌカタヒバ Selaginella moellendorffii
ハナヤスリ科ハナワラビ属
オオハナワラビ Sceptridium japonicum
林縁斜面に生育。栄養葉は緑色、葉の表面はなめらかで光沢があり辺縁には柔らかいが鋭い鋸歯がある。

オオハナワラビ、葉(栄養葉)
オオハナワラビが関わる雑種 ゴジンカハナワラビか
現地では葉の質の柔らかいオオハナワラビとしたが、怪しいので胞子葉を持ち帰り胞子を観察すると胞子はすべて凹み雑種であることをうかがわせていた。オオハナワラビに似るがそれに比べると葉は淡緑色、葉の質は柔らい。裂片表面で脈が浮き出る。葉の辺縁の鋸歯はオオハナワラビよりも弱い。観察された胞子はすべて乱れ雑種をうかがわせる。沼津アルプス大平山・鷲頭山ではシチトウハナワラビ⇒こちら・⇒こちら2が確認されているのでシチトウハナワラビとオオハナワラビの雑種ゴジンカハナワラビの可能性も考えられる。

オオハナワラビが関わる雑種、栄養葉

①オオハナワラビが関わる雑種、葉柄
②オオハナワラビが関わる雑種、羽片基部
①オオハナワラビが関わる雑種、最下羽片
②オオハナワラビが関わる雑種、羽片

オオハナワラビが関わる雑種、一緒に生えていた一昨年の葉の裂片

オオハナワラビが関わる雑種、胞子はすべて凹む
コケシノブ科ハイホラゴケ属
・コハイホラゴケ(ハイホラゴケ×ヒメハイホラゴケ) Vandenboschia kalamocarpa × V. nipponica
林内の日陰のウエットな岩壁に生育。葉は披針形。羽片は波打ち、葉身は立体的になる。胞子は歪な形のものがほとんどであった。

林内の日陰のウエットな岩壁に生育するコハイホラゴケ(ハイホラゴケ×ヒメハイホラゴケ)

①コハイホラゴケ(ハイホラゴケ×ヒメハイホラゴケ)、葉身は立体的
②コハイホラゴケ(ハイホラゴケ×ヒメハイホラゴケ)、胞子のう群

①②コハイホラゴケ(ハイホラゴケ×ヒメハイホラゴケ)、1つの胞子のうを壊したようす
ウラジロ科コシダ属
・コシダ Dicranopteris linearis
ウラジロ科ウラジロ属
・ウラジロ Diplopterygium glaucum
キジノオシダ科キジノオシダ属
・キジノオシダ Plagiogyria japonica
・オオキジノオ Plagiogyria euphlebia
ホングウシダ科ホラシノブ属
・ホラシノブ Odontosoria chinensis
コバノイシカグマ科イヌシダ属
・イヌシダ Sitobolium hirsutum
コバノイシカグマ科フモトシダ属
・フモトシダ Microlepia marginata
・ケブカフモトシダ Microlepia marginata var. yakusimensis
コバノイシカグマ科イワヒメワラビ属
・イワヒメワラビ Hypolepis punctata
イノモトソウ科イノモトソウ属
・イノモトソウ Pteris multifida
・オオバノイノモトソウ Pteris cretica
・オオバノアマクサシダ Pteris terminalis var. fauriei
オオバノアマクサシダは場所によっては広範囲に群生するような林床も見られた。オオバノハチジョウシダには出会わなかった。
・ナチシダ Pteris wallichiana
シカの食害が少ないためか、多様なシダが繁茂しシカ食害が激しいところに比べナチシダは少なかった。
・アマクサシダ Pteris dispar
イノモトソウ科イワガネゼンマイ属
・イワガネゼンマイ
イノモトソウ科タチシノブ属
・タチシノブ Onychium japonicum
ヒメシダ科ヒメワラビ属
・ミドリヒメワラビ Macrothelypteris viridifrons
ヒメシダ科ミヤマワラビ属
・コゲジゲジシダ Phegopteris decursivepinnata
ヒメシダ科ハシゴシダ属
・ハシゴシダ Amauropelta glanduligera
ヒメシダ科シマヤワラシダ属
・ヤワラシダ Metathelypteris laxa
ヒメシダ科ミゾシダ属
・ミゾシダ Leptogramma mollissima
ヒメシダ科ケホシダ属
・下部羽片が耳状に短縮するホシダ Christella acuminataあるいは
イブキホシダ(イブキシダ×ホシダ)Christella acuminata×Pseudocyclosorus esquirolii
・イブキホシダ(イブキシダ×ホシダ) Pseudocyclosorus esquirolii×Christella acuminata
※ホシダにも通気口の痕跡のようなものがあることが確認でき訂正しました。
ホシダとイブキシダとの雑種か、あるいはホシダの個体変異か。まだ胞子は調べていない。葉身下部羽片前側基部裂片はやや発達し最下部羽片はごく短縮する。イブキシダに見られる通気口の痕跡のようなものも観察される。
観察会を通してホシダはよく目にした。イブキシダは探したが出会わなかった。このシダの生育場所は林内の涸れ沢沿い。周辺にはホシダは観察されず、掲載した1株のみ観察。
胞子のう群の写真は同行の方が撮影されたものを掲載させて頂く。同行の方からは、ネットでホシダを調べると葉身下部羽片が短縮する株が見られるとの助言を頂いています。機会があればよい季節に再訪し胞子を採取・観察してみたい。
林内のウエットな涸れ沢で観察されたホシダあるいはイブキホシダ(イブキシダ×ホシダ)
①ホシダあるいはイブキホシダ(イブキシダ×ホシダ)、葉身
②ホシダあるいはイブキホシダ(イブキシダ×ホシダ)、葉身上部裏側

①ホシダあるいはイブキホシダ(イブキシダ×ホシダ)、葉身下部
②ホシダあるいはイブキホシダ(イブキシダ×ホシダ)、短縮する葉身最下部の羽片

①②ホシダあるいはイブキホシダ(イブキシダ×ホシダ)、羽片裏側
・ホシダ Christella acuminata
メシダ科メシダ属
・シケチシダ Athyrium decurrentialatum
・ヤマイヌワラビ Athyrium vidalii
・ヒロハイヌワラビ Athyrium wardii
メシダ科シケシダ属
・ナチシケシダ Deparia petersenii
ナチシケシダはこの辺りでは半常緑性で、この季節でも葉が枯れずに残っている。シケシダの仲間では胞子には多少歪なものが混ざる。

林縁の土手の生育するナチシケシダ
・シケシダ Deparia japonica
・ヘラシダ Deparia lancea
メシダ科ノコギリシダ属
・ヒカゲワラビ Diplazium chinense
・キヨタキシダ Diplazium squamigerum
・シロヤマシダ Diplazium hachijoense
オシダ科オシダ属
・トウゴクシダ Dryopteris nipponensis
トウゴクシダは形態の変異が大きく、2形を紹介します。

①トウゴクシダ
②トウゴクシダ
・緑色ベニシダ似のマルバベニシダ Dryopteris fuscipes
スギ植林地内林床に生育ベニシダに似た特徴を有するマルバベニシダ。葉柄下部の鱗片は栗色を帯びやや幅のある披針形で葉柄には纏わりつかずつく。胞子のう群が小羽片中肋寄りであるがベニシダとそう変わらない。

スギ植林地内林床に生育するマルバベニシダ
・サイゴクベニシダ Dryopteris championii
大仙山では多くの株が生育していた。2つの株を紹介する。どちらも葉は厚く光沢がある。
標本1 サイゴクベニシダ(胞子のう群は辺縁寄りにつく株)

乾燥気味の崖に生育するサイゴクベニシダ

①サイゴクベニシダ、葉柄の鱗片
②サイゴクベニシダ、胞子のう群
標本2 サイゴクベニシダ(胞子のう群は中間~やや中肋寄りにつく株)

乾燥気味の崖に生育するサイゴクベニシダ
・オオイタチシダ(アツバオオイタチシダ型、ツヤナシオオイタチシダ型、アオニオオイタチシダ型、スリムな葉身型等)
・ヤマイタチシダ Dryopteris bissetiana
・ベニオオイタチシダ Dryopteris erythrovaria
・ヒメイタチシダ Dryopteris sacrosancta
岩壁や林道沿いの崖でときどき見られた。
・ベニシダ Dryopteris erythrosora
・キノクニベニシダ Dryopteris kinokuniensis
・オオベニシダ Dryopteris hondoensis
・ナガバノイタチシダ Dryopteris sparsa
・イヌイワヘゴ Dryopteris cycadina
・キヨズミヒメワラビ Dryopteris maximowicziana
オシダ科カナワラビ属
・オニカナワラビ Arachniodes chinensis

①オニカナワラビ、弾けた胞子のう群
②オニカナワラビ、いくつかの色の濃い充実した胞子嚢
・コバノカナワラビ Arachniodes sporadosora
奈古谷の森では谷沿いに生えるシダの中で優占種。根茎の写真を撮影し埋め戻す。

沢沿いのスギ植林地では優占種のコバノカナワラビ
・ホソバカナワラビ Arachniodes exilis
奈古谷の森ではコバノカナワラビと共に優占種。

スギ植林地内沢沿いの岩上などで優占種のホソバカナワラビ
・ホソコバカナワラビ(ホソバカナワラビ×コバノカナワラビ)
Arachniodes exilis × A. sporadosora
コバノカナワラビやホソバカナワラビは非常にたくさん目にすることがあったが、1群落()だけホソコバカナワラビが観察された。葉の裏側には空っぽの胞子嚢が密に固まった胞子のう群がつく。採取し持ち帰り空の胞子のう群をよく調べるとわずかに胞子が詰まった胞子のうが含まれていた。胞子は大きさ・形が不揃いで雑種と推定される。
ホソコバカナワラビ

①②ホソコバカナワラビ、ほとんど空の胞子嚢の中にわずかに観察される中身が詰まった胞子嚢

①ホソコバカナワラビ、中身が詰まった胞子を壊したようす
②ホソコバカナワラビ、歪な胞子(左の写真の拡大)
・ハカタシダ Arachniodes simplicior
・オオカナワラビ Arachniodes amabilis var. fimbriata
・リョウメンシダ Arachniodes standishii
オシダ科ヤブソテツ属
・テリハヤブソテツ Cyrtomium laetevirens
・ヤブソテツ Cyrtomium fortunei
(ツヤナシヤマヤブソテツ型、ホソバヤマヤブソテツ型)
・ナガバヤブソテツ Cyrtomium devexiscapulae
オシダ科イノデ属
・イノデ Polystichum polyblepharum
・アイアスカイノデ Polystichum longifrons
・アスカイノデ Polystichum fibrillosopaleaceum
イノデ類の中では最も光沢がある葉をもつものの1つである。一見イノデに似るが葉柄の鱗片で容易に区別できる。

林床に生育するアスカイノデ

①アスカイノデ、葉柄上部の鱗片
②アスカイノデ、葉柄基部の鱗片
・艶の乏しいアスカイノデが関わる雑種 ヨコハマイノデか
陽が傾き始め撮影がやや困難になったころ観察。撮影した画像の色はあまりよくない。南奈古谷の谷。林床植生は豊かでシダ類は豊富。葉柄の鱗片はアスカイノデのように狭い披針形でねじれるが最基部鱗片は幅の広い長卵状披針形。狭く披針形でねじれる鱗片の特徴からアスカイノデが関わっていることはわかるが、その相手がよくわからない。葉はイノデモドキのように先端はやや尾状、光沢は弱い。アスカイノデとイノデモドキの雑種ヨコハマイノデの可能性も考えられる。胞子のう群のようすがわかる季節に再訪したい。

ヒノキ・スギ林林床に生育するアスカイノデが関わる雑種

①アスカイノデが関わる雑種、葉身の先は尾状
②アスカイノデが関わる雑種、羽片

①アスカイノデが関わる雑種、葉柄の鱗片
②アスカイノデが関わる雑種、葉柄最基部の鱗片

①②アスカイノデあるいはアスカイノデが関わる雑種、胞子のう群
・ドウリョウイノデ(アイアスカイノデ×イノデ) Polystichum longifrons × P. polyblepharum
ウラボシ科ノキシノブ属
・クリハラン Lepisorus ensatus
・ノキシノブ Lepisorus thunbergianus
・フジノキシノブが関わる雑種
葉は幅が広く。淡緑色でフジノキシノブではないかと思ったが、根茎からはノキシノブ程度間隔を空けて葉をつけていた。胞子を観察すると大きさ・形は乱れ雑種と推定される。フジノキシノブ×ノキシノブに可能性が高い。

林縁のカキの木に着生するフジノキシノブが関わる雑種







































