
私たちは、シダ類が群生する渓谷(山王峡およびその周辺の谷)を歩きました。天候がいまいちで、岩場にあまり近づけず詳しく観察できませんでしたが、とりあえず見られたシダを紹介します。
イワヒバ科 イワヒバ属
・イワヒバ Selaginella tamariscina
・カタヒバ Selaginella involvens
・イヌカタヒバ Selaginella moellendorffii
ハナヤスリ科 ハナワラビ属
・オオハナワラビ Sceptridium japonicum
・フユノハナワラビ Sceptridium ternatum
ゼンマイ科 ゼンマイ属
・ゼンマイ Osmunda japonica
コケシノブ科 アオホラゴケ属
・アオホラゴケ Crepidomanes latealatum
葉の大きさは3~10㎝・幅が2~4㎝。裂片の先は鈍頭。偽脈は短い。包膜は蕾形。

沢沿いの林内、ウエットな岩上に生育するアオホラゴケ
・コケホラゴケ Crepidomanes makinoi
アオホラゴケよりも小形で3~8㎝・幅は1~2㎝。裂片の先は鋭頭。偽脈は長い。包膜は蕾形で先端は鋭頭。沢沿いの林内、切り立った岩壁に生育することが多いがアオホラゴケよりも日陰でウエットな環境に生育する。

アオホラゴケよりも日陰でウエットな岩壁に生育するコケホラゴケ
コケシノブ科 ハイホラゴケ属
・ハイホラゴケ Vandenboschia kalamocarpa
林内の岩壁の底部や渓流沿いのウエットな崖に生育。葉身の長さは10㎝前後、葉柄は葉身よりやや短い。葉は波打たず平面的。充実した胞子は確認できるが数が少なかった。雑種の可能性も考えなければならない。

渓流沿いのウエットな崖に生育するハイホラゴケ
コケシノブ科 コケシノブ属 [#qdcfa9b4]
・ホソバコケシノブ Hymenophyllum polyanthos
・コウヤコケシノブ Hymenophyllum barbatum
ウラジロ科 ウラジロ属
・ウラジロ Diplopterygium glaucum
キジノオシダ科 キジノオシダ属
・キジノオシダ Plagiogyria japonica
・オオキジノオ Plagiogyria euphlebia
・フタツキジノオか(オオキジノオ×キジノオシダ) Plagiogyria euphlebia × P. japonica
ホングウシダ科 ホラシノブ属
・ホラシノブ Odontosoria chinensis
コバノイシカグマ科 オオフジシダ属
・オオフジシダ Monachosorum nipponicum
湿り気のある高く切り立った岩壁に生育。同じ崖にはコケシノブの仲間やチャセンシダの仲間が生育。写真に撮影できた株は小形の未成株。

切り立った岩壁の下部に生育するオオフジシダの未成株
コバノイシカグマ科 イヌシダ属
・イヌシダ Sitobolium hirsutum
・コバノイシカグマ Sitobolium zeylanicum
コバノイシカグマ科 フモトシダ属
・フモトシダ Microlepia marginata
コバノイシカグマ科 イワヒメワラビ属
・イワヒメワラビ Hypolepis punctata
コバノイシカグマ科 ワラビ属
・ワラビ Pteridium aquilinum subsp. japonicum
イノモトソウ科 シシラン属
・シシラン Haplopteris flexuosa
イノモトソウ科 イノモトソウ属
・イノモトソウ Pteris multifida
・オオバノイノモトソウ Pteris cretica
・マツザカシダ Pteris nipponica
・オオバノアマクサシダ Pteris terminalis var. fauriei
・ナチシダ Pteris wallichiana
イノモトソウ科 イワガネゼンマイ属
・イワガネゼンマイ Coniogramme intermedia
・イワガネソウ Coniogramme japonica
イノモトソウ科 タチシノブ属
・タチシノブ Onychium japonicum
イノモトソウ科 ホウライシダ属
・ハコネシダ Adiantum monochlamys
・クジャクシダ Adiantum pedatum
ナヨシダ科 ウスヒメワラビ属
・ウスヒメワラビ Acystopteris japonica
チャセンシダ科 チャセンシダ属
・イヌチャセンシダ Asplenium tripteropus
林内、ウエットな苔むした岩壁でときどき目にしました。

ウエットな苔むした岩壁に生育するイヌチャセンシダ

①イヌチャセンシダ、中軸背軸側にある翼と胞子のう群
②イヌチャセンシダ、、葉身中軸上や先端にできるむかご
・イヌチャセンシダ幼株か
渓谷沿いの苔むした大岩に生育。葉身の先が大きな頂羽片となる。イヌチャセンシダと思われるがよくわからない。ご存じの方は下記までご連絡いただけるとありがたいです。

イヌチャセンシダ幼株か
・ヌリトラノオ Asplenium normale
ウエットな岩上や腐植が堆積した岩屑地などに生育。

林内、腐植が堆積した岩屑地に生育するヌリトラノオ

①ヌリトラノオ、羽片および胞子のう群
②ヌリトラノオ、むかご
・シモダヌリトラノオ(シモツケヌリトラノオ×ヌリトラノオ) Asplenium boreale × A. normale
胞子のようすは確認できていない。現地の岩壁等詳しく調べておらずシモツケヌリトラノオは確認することができなかったが、ヌリトラノオとの雑種と思われる。尾状に長く伸びる葉身の末端にはむかごをつけていた。


①シモダヌリトラノオ、葉身下部羽片
②シモダヌリトラノオ、葉身先端につくむかご
・テンリュウヌリトラノオか Asplenium shimurae
観察会同行の方から、「標本を整理していて中軸途中にむかごをつけその先も成長した株が見つかった」との情報をいただいている。テンリュウヌリトラノオあるいは雑種のエンシュウヌリトラノオ(ヌリトラノオ × テンリュウヌリトラノオ)の可能性がある。
・クモノスシダ Asplenium ruprechtii
この辺りの混在岩地帯には石灰岩の地層も挟み込まれている。周辺ではクモノスシダが観察された。

林内の岩壁に生育するクモノスシダ
・オクタマシダ Asplenium pseudowilfordii
林内の切り立った岩壁や岩棚などに生育。葉は2回羽状に分かれる。小羽片は深~浅裂する。奥多摩で観察している株とは羽片の形・切れ込みに違いが見られるが個体変異の範囲であろう。現地でミサクボシダとしていたシダである。その後、胞子の観察で誤りに気が付きました。

林内の切り立った岩壁に生育するオクタマシダミサクボシダ

①オクタマシダ、葉身裏側
②オクタマシダ、胞子のう群および包膜
胞子を観察した葉

①オクタマシダ、葉身
②オクタマシダ、葉身裏側

①オクタマシダ、羽片
②オクタマシダ、羽片裏側(胞子のう群)
・トキワシダ Asplenium yoshinagae
渓流のそば苔むした岩上や滝の周りの岩壁でよく見られた。

渓流のそば苔むした岩上に生育するトキワシダ

①渓流のそば苔むした岩上に生育するトキワシダ
②トキワシダ、羽片
・ミサクボシダ(オクタマシダ×トキワシダ) Asplenium pseudowilfordii × A. yoshinagae
渓流の大岩の岩上に生育。注意しないとオクタマシダと間違えてしまう。恥ずかしいお話であるが、この写真の株の周辺に生育するよく似た株(上記のオクタマシダ)をミサクボシダと思い、羽片を採取して帰り、胞子を観察したところ胞子は数・形とも正常でオクタマシダであることが判明した。残念なことのここに掲載した写真の株は胞子は採取できておらず、まだ胞子のようすは確認できていない。

沢沿いのウエットな岩上に生育するミサクボシダ

沢沿いのウエットな岩上に生育するミサクボシダ
①②沢沿いのウエットな岩上に生育するミサクボシダ

①ミサクボシダ、羽片(葉身下部)
②ミサクボシダ、羽片(葉身中部)
※観察会に同行された高橋励氏がオクタマシダ・トキワシダ・ミサクボシダ3種の違いを資料を基にスケッチで描いてくださいましたので掲載させていただきます。

オクタマシダ・トキワシダ・ミサクボシダの比較
・トラノオシダ Asplenium incisum
・コバノヒノキシダ Asplenium anogrammoides
・トキワトラノオ Asplenium pekinense
・イワトラノオ Asplenium tenuicaule
・クルマシダ Asplenium wrightii
ヒメシダ科 ヒメワラビ属
・ヒメワラビ Macrothelypteris oligophlebia
ヒメシダ科 ミヤマワラビ属
・コゲジゲジシダ Phegopteris decursivepinnata
ヒメシダ科 ハシゴシダ属
・ハシゴシダ Amauropelta glanduligera
ヒメシダ科 オオハシゴシダ属
・ハリガネワラビ Coryphopteris japonica
・イワハリガネワラビ Coryphopteris musashiensis
ヒメシダ科 シマヤワラシダ属
・ヤワラシダ Metathelypteris laxa
ヒメシダ科 ミゾシダ属
・ミゾシダ Leptogramma mollissima
ヒメシダ科 ケホシダ属
・ホシダ Christella acuminata
イワデンダ科 フクロシダ属
・フクロシダ Physematium manchuriense
ヌリワラビ科 ヌリワラビ属
・ヌリワラビ Rhachidosorus mesosorus
コウヤワラビ科 イヌガンソク属
イヌガンソク Pentarhizidium orientale
シシガシラ科 シシガシラ属
・シシガシラ Spicantopsis niponica
メシダ科 ノコギリシダ属
・オニヒカゲワラビ Diplazium nipponicum
渓谷沿いの腐植が堆積した岩屑地などでときどき目にした。

渓谷沿いの腐植が堆積した岩屑地に生育するオニヒカゲワラビ

①オニヒカゲワラビ、胞子のう群
②オニヒカゲワラビ、羽軸・小羽軸に生える短毛
・ノコギリシダ Diplazium wichurae
メシダ科 ウラボシノコギリシダ属
・イヌワラビ Anisocampium niponicum
メシダ科 メシダ属
・シケチシダ Athyrium decurrentialatum
・ホソバイヌワラビ Athyrium iseanum
メシダ科 シケシダ属
・ホソバシケシダ Deparia conili
・オオヒメワラビ Deparia okuboana
オシダ科 オシダ属
・マルバベニシダ Dryopteris fuscipes
尾根筋やあまりウエットではない林床に生育することが多い。

尾根筋の岩石が風化して土壌化した林床に生育するマルバベニシダ
・エンシュウベニシダ(小羽片がスリムで鋸歯が無い) Dryopteris medioximaマルバベニシダ(毛深い)
葉柄の鱗片は遠目にはちょっとサイゴクベニシダに見えるくらい密についているが別物、葉の厚さそれほど厚くない。葉柄基部には明るく赤っぽい鱗片がゆるく纏わりつくようにつき葉身の形も幅が広く楕円状披針形。胞子のう群は小羽片の中肋に接するくらい近くにつく。マルバベニシダに比べウエットな渓流の沿いの岩の多いスギなどが生える林床に生育(マルバベニシダも数は少ないがウエットな岩場にも生育することはある)。

沢沿いのウエットな林床に生育するエンシュウベニシダ(鋸歯無しスリムな小羽片)毛深いマルバベニシダ

①沢沿いのウエットな林床に生育するエンシュウベニシダ(鋸歯無しスリムな小羽片)毛深いマルバベニシダ
②エンシュウベニシダ(鋸歯無しスリムな小羽片)毛深いマルバベニシダ、羽片
①エンシュウベニシダ(鋸歯無しスリムな小羽片)毛深いマルバベニシダ、葉柄
②エンシュウベニシダ(鋸歯無しスリムな小羽片)毛深いマルバベニシダ、葉柄基部の鱗片

エンシュウベニシダ(鋸歯無しスリムな小羽片)毛深いマルバベニシダ、中軸の鱗片

①②エンシュウベニシダ(鋸歯無しスリムな小羽片)毛深いマルバベニシダ、胞子のう群
・ヌカイタチシダ Dryopteris gymnosora
切り立た岩壁下の岩屑地に生育していた。葉柄は長く華奢。葉は幅の広い三角形で淡緑色。羽片は無柄。胞子のう群は最下羽片基部を中心につく。

切り立た岩壁下の岩屑地に生育するヌカイタチシダ
・クマワラビ Dryopteris lacera
・イワヘゴ Dryopteris atrata
・イヌイワヘゴ Dryopteris cycadina
・オオイタチシダ(アツバオオイタチシダ型・ツヤナシオオイタチシダ型)Dryopteris hikonensis
・ミサキカグマ Dryopteris chinensis
・ベニシダ Dryopteris erythrosora
・トウゴクシダ Dryopteris nipponensis
・ミヤマイタチシダ Dryopteris sabaei
・キヨスミヒメワラビ Dryopteris maximowicziana
オシダ科 イノデ属
・カタイノデ Polystichum makinoi
渓流のやや上部、崖や岩屑地に生育。葉の大きさは40~50㎝の中形のイノデの仲間。葉は光沢があるが渋い黄緑色。葉柄下部の鱗片は黒に近い黒褐色。胞子のう群は中間につく。

渓谷沿いの岩屑地に生育するカタイノデ
・ツルデンダ Polystichum craspedosorum
・イノデ Polystichum polyblepharum
・イノデモドキ Polystichum tagawanum
・サイゴクイノデ Polystichum pseudomakinoi
・ジュウモンジシダ Polystichum tripteron
・ヒメカナワラビ Polystichum tsus-simense
オシダ科 カナワラビ属
・オニカナワラビ Arachniodes chinensis
・ハカタシダ Arachniodes simplicior
・オオカナワラビ Arachniodes amabilis var. fimbriata
オシダ科 ヤブソテツ属
・テリハヤブソテツ Cyrtomium laetevirens
・ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ型・テリハヤマヤブソテツ型)Cyrtomium fortunei
ウラボシ科 サジラン属
・サジラン Loxogramme duclouxii
ウエットな渓谷内、林内の岩上に生育するサジラン。林内の岩上では時々目にしたが胞子のう群をつけていない株が多くなかなかサジランと決めることができなかった。胞子のう群をつける葉をやっと見つけることができ、胞子のう群はイワヤナギシダより広く角度で斜上してつけていた。

林内の岩上に生育するサジラン
ウラボシ科 アオネカズラ属
・アオネカズラ Goniophlebium niponicum

①林内の岩上に生育するアオネカズラ
②明るい林縁の岩上に生育するアオネカズラ
ウラボシ科 ノキシノブ属
・クロノキシノブ Lepisorus nigripes
苔むした沢沿いの岩上に生育する。黒っぽい葉柄が確認できる。

苔むした沢沿いの岩上に生育するクロノキシノブ
・マメヅタ
・ノキシノブ Lepisorus thunbergianus
・フジノキシノブか Lepisorus kuratae
・クリハラン Lepisorus ensatus
ウラボシ科 ミツデウラボシ属
・ミツデウラボシ Selliguea hastata
ウラボシ科 ヒトツバ属
・ヒトツバ Pyrrosia lingua
製作中です。








































