仙丈ヶ岳へ向かう途中の稜線から見た甲斐駒ヶ岳。2025年7月22日 仙丈ヶ岳
2023年7月26日に甲斐駒ヶ岳で発見された植物を確認する目的で甲斐駒ヶ岳南面を歩きました。途中観察されたシダを紹介します。

ヒカゲノカズラ Lycopodium clavatum var. nipponicum
ヒカゲノカズラ科 ヒカゲノカズラ属

キャンプサイトのそばを流れる渓流沿いの林縁の明るい崖に生育。
渓流沿いの林縁に群生するヒカゲノカズラ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
渓流沿いの林縁に群生するヒカゲノカズラ

渓流沿いの林縁の明るい崖に生育するヒカゲノカズラ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
渓流沿いの林縁の明るい崖に生育するヒカゲノカズラ

ヒカゲノカズラ、胞子のう穂。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 ヒカゲノカズラ、胞子のう穂の柄。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①ヒカゲノカズラ、胞子のう穂
②ヒカゲノカズラ、胞子のう穂の柄




タカネスギカズラ Lycopodium annotinum var. acrifolium
ヒカゲノカズラ科 スギカズラ属

仙水峠の近く、両側の山から崩れた岩でせき止められた小さな湖の周辺に生育。葉は狭披針形・全縁、葉の上半分は針状。スギカズラに見られる葉縁の鋸歯はない。3m程度の範囲に群生していたが胞子のう穂をつけた株を見つけることはできなかった。
小さな湖の周辺に生育するタカネスギカズラ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
小さな湖の周辺に生育するタカネスギカズラ

タカネスギカズラ、立ち上がる茎の高さは8~12㎝。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳

タカネスギカズラ、葉は狭披針形・全縁で葉の上半分は針状。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 タカネスギカズラ、葉は狭披針形・全縁で葉の上半分は針状。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②タカネスギカズラ、葉は全縁

タカネスギカズラ、生育地。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 タカネスギカズラ、生育地。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②タカネスギカズラ、生育地




ホソバトウゲシバ(株立ち・単独で生育) Huperzia serrata var. serrata
ヒカゲノカズラ科 コスギラン属

一般にトウゲシバの仲間は単独でも生育するが、群生することも多い。ここ2000m付近の苔むした樹林下(北沢峠)に生育するホソバトウゲシバの仲間は群生せず、1株ずつ株立ちするようにして生育している。掘り起こして調べるわけにはいかないが、1つの株が数回枝分かれしたのち5~20本の茎を株立ちするようにして生育していた。地上茎の長さは8~12㎝で枝分かれする。葉は細長く幅1.2~1.5㎜・長さ5~10mm。地上茎の下から古い順に胞子嚢やむかごをつけている。
林床に株立ちした株ごと点在して生育するホソバトウゲシバ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
林床に株立ちして点在して生育するホソバトウゲシバ

林床に株立ちして点在して生育するホソバトウゲシバ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 林床に株立ちして点在して生育するホソバトウゲシバ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②林床に株立ちして点在して生育するホソバトウゲシバ

茎を立ち上げるホソバトウゲシバ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 茎を立ち上げるホソバトウゲシバ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②茎を立ち上げるホソバトウゲシバ

ホソバトウゲシバ、生長点とむかご。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 ホソバトウゲシバ、葉。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①ホソバトウゲシバ、生長点とむかご
②ホソバトウゲシバ、葉




不明なHuperziaの仲間(葉は短く・長さの割に幅がある)エゾノコスギラン Lycopodium selago var. patens
ヒカゲノカズラ科 コスギラン属

名前はよくわからない。図鑑・ネットで調べたが不明。
ここ(北沢峠)では圧倒的にホソバトウゲシバ(1株ずつ株立ちする)が多いが1群落だけ葉が小さく幅のある葉をつけるエゾノコスギランが観察された。
葉は小さいが長さの割に幅が広い。葉の大きさには変化があり、この季節、先端の生長点付近の茎は短い葉だけをつけている。2000m樹林下の林床に生育。葉は紅葉なのか枯れかけているものかよくわからないがなぜか黄緑色であった。ホソバトウゲシバの個体変異の可能性もある。よく似た株を八ヶ岳八幡平で観察している。
樹林内、苔むした倒木上に生育するエゾノコスギラン。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
樹林内、苔むした倒木上に生育するエゾノコスギラン

地上茎を立ち上げるエゾノコスギラン。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
地上茎を立ち上げるエゾノコスギラン




オオバショリマ Oreopteris quelpartensis
ヒメシダ科 オオバショリマ属

森林限界近くの急峻な地形。多少矮性化したダケカンバ林林床に群生する。
ダケカンバが生育する急峻な林床に生育するオオバショリマ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
ダケカンバが生育する急峻な林床に群生するオオバショリマ

オオバショリマ、葉柄の鱗片。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
オオバショリマ、葉柄の鱗片

オオバショリマ、羽片。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 オオバショリマ、胞子のう群。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①オオバショリマ、羽片
②オオバショリマ、胞子のう群




ヘビノネゴザ Athyrium yokoscense
メシダ科 メシダ属

標高2000m付近の樹林帯の林床に生育。葉柄は紅色を帯びミヤマヘビノネゴザかと思ったが包膜は全縁でヘビノネゴザであった。
樹林帯の林床に生育するヘビノネゴザ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
樹林帯の林床に生育するヘビノネゴザ

ヘビノネゴザ、葉柄基部の鱗片。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
ヘビノネゴザ、葉柄基部の鱗片

ヘビノネゴザ、包膜は全縁。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 ヘビノネゴザ、包膜は全縁。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
ヘビノネゴザ、包膜




タカネサトメシダ Athyrium pinetorum
メシダ科 メシダ属

2000m付近の亜高山帯の林床に生育。葉柄基部の鱗片は明褐色。葉身の形は卵状三角形~長三角形。羽片数はそれほど多くない。包膜は胞子のう群を包み込み辺縁はほつれる。

標本1 葉身の形:長卵状披針形
樹林内の林床に生育するタカネサトメシダ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
樹林内の林床に生育するタカネサトメシダ

樹林内の林床に生育するタカネサトメシダ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 タカネサトメシダ、葉柄基部には明褐色の鱗片をつける。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①樹林内の林床に生育するタカネサトメシダ
②タカネサトメシダ、葉柄基部色の鱗片

タカネサトメシダ、包膜は胞子のう群を包み込み辺縁はほつれる。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 タカネサトメシダ、包膜は胞子のう群を包み込み辺縁はほつれる。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②タカネサトメシダ、包膜




標本2 葉身の形:卵状三角形   
林内急斜面にかかるハシゴの脇に生育するタカネサトメシダ、羽片数葉少ない。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 タカネサトメシダ、羽片。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 
①林内急斜面にかかるハシゴの脇に生育するタカネサトメシダ
②タカネサトメシダ、羽片

タカネサトメシダ、包膜。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 タカネサトメシダ、羽片。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②タカネサトメシダ、包膜




標本3 葉身の形:三角形
沢沿いの林縁の崖に生育するタカネサトメシダ、羽片数葉少ない。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 




ミヤマメシダ Athyrium melanolepis
メシダ科 メシダ属

次項のエゾメシダの下方の沢(涸れ沢)のそばに生育。丈の低い樹木の下に生育。葉は卵状長楕円形。葉柄や中軸には黒に近い光沢がある鱗片をつける。鱗片はよく捻じれる。包膜は一部が狭まったり広がったりと不定形になることがある。
丈の低い樹木が茂る林床に生育するミヤマメシダ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
丈の低い樹木が茂る林床に生育するミヤマメシダ

ミヤマメシダ、葉柄基部には黒色で光沢の強い鱗片をつける。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 ミヤマメシダ、ミヤマメシダ、葉柄基部には黒色で光沢の強い鱗片をつける。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②ミヤマメシダ、葉柄基部の鱗片

ミヤマメシダ、中軸には黒色で光沢の強い鱗片をつける。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 ミヤマメシダ、中軸には黒色で光沢の強い鱗片をつける。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②ミヤマメシダ、中軸

ミヤマメシダ、羽片裏側。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
ミヤマメシダ、羽片裏側

ミヤマメシダ、包膜の形は乱れやや不定形になることがある。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 ミヤマメシダ、包膜の形は乱れやや不定形になることがある。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②ミヤマメシダ、包膜




エゾメシダ Athyrium brevifrons
メシダ科 メシダ属

標高の高い森林限界付近の丈の低い樹木が生育する岩が多い崖に生育。近くにはミヤマメシダも生育している。遠目には区別が難しい。比較して眺めてみると、違いはエゾメシダは①葉柄は紅色を帯びることがある(紅色を帯びないこともある)。②葉柄の鱗片が栗色で、③ミヤマメシダほど光沢は無くクリクリ巻いていない。④葉柄は生育環境にもよるが短いことが多い。⑤中軸には細かい短毛が生えることがある。⑥包膜が胞子のう群をきれいに包み込む(ミヤマメシダは包膜が不定形のように変形することがある)。
丈の低い樹木が茂る岩場の崖に生育するエゾメシダ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
丈の低い樹木が茂る岩場の崖に生育するエゾメシダ

エゾメシダ、葉柄基部には栗色の鱗片がつく。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 エゾメシダ、葉柄基部には栗色の鱗片がつく。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 
①②エゾメシダ、葉柄基部の鱗片

エゾメシダ、葉柄下部には栗色の鱗片がつく。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 エゾメシダ、葉柄下部には栗色の鱗片がつく。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②エゾメシダ、葉柄下部には栗色の鱗片

エゾメシダ、葉柄は短い。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 エゾメシダ、葉柄は短い。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
①②エゾメシダ、葉柄

エゾメシダ、中軸には短毛がつくことがある。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 エゾメシダ、中軸には短毛がつくことがある。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 
①②エゾメシダ、中軸

エゾメシダ、羽片裏側 胞子のう群。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
エゾメシダ、羽片裏側

エゾメシダ、包膜は胞子のう群を包み込む。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 エゾメシダ、包膜は胞子のう群を包み込む。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳 
①②エゾメシダ、包膜




シノブカグマ Arachniodes mutica
オシダ科 カナワラビ属

亜高山帯の林床ではやや普通に見られた。
亜高山帯の林床ではやや普通に見らるシノブカグマ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳




ナガオノキシノブ Lepisorus rufofuscus
ウラボシ科 ノキシノブ属

標高2000m付近のキャンプサイトの沢の上に架かる夏緑広葉樹の樹幹に着生していた。それより標高の高いところでは見られなかった。
沢の上に架かる夏緑広葉樹の樹幹に着生するナガオノキシノブ。2025年7月21日 甲斐駒ヶ岳
沢の上に架かる夏緑広葉樹の樹幹に着生するナガオノキシノブ




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