新潟糸魚川を河口とする姫川の源流付近(千曲川支流農具川源流青木湖付近)の森を歩きました。森の中には清流と不思議な凹地がいくつかあり、ドリーネなのか噴火口の跡なのかよくわかりません。大きなものは湿地が形成されていました。林内にはオシダやイノデ類、その他のシダが繁茂し半日では観察しきれませんでした。
トウゲシバの仲間 [#h86341fe]
ヒカゲノカズラ、ヒロハトウゲシバ、ホソバトウゲシバなどが見られた。
''ホソバトウゲシバ Huperzia serrata var. serrata
ヒカゲノカズラ科 コスギラン属
チャセンシダの仲間 [#v2c4a385]
トラノオシダ、コタニワタリなどが観察された。
コタニワタリ Asplenium scolopendrium
チャセンシダ科 チャセンシダ属
この辺りは地表に露出している岩があまり見られず、コタニワタリも地表では見られず林内を通る林道の石垣に生育しているところを観察。

林内の石垣に生育するコタニワタリ
ヒメシダの仲間
ミヤマワラビ、ヒメシダ、ミゾシダ、ハリガネワラビ、メニッコウシダ、ヤワラシダ、ヒメヤワラシダなどが観察された。
ヒメヤワラシダ Metathelypteris
ヒメシダ科 シマヤワラシダ属
林内に群生する。根茎はヤワラシダに比べ間延びして葉をつける。

林床に群生するヒメヤワラシダ
メニッコウシダ Coryphopteris sylva-nipponica
ヒメシダ科 オオハシゴシダ属
林床に生育。1m~2mの範囲で葉を非常に込み合って群生させる。その群生が数か所に点在していた。ハリガネワラビに似るが植物体全体に有毛、葉身はややスリムで最下羽片は多少短縮する程度。新芽が淡緑色。

林床に密に群生するメニッコウシダ
メシダの仲間 [#g1a7abca]
ヤマイヌワラビ、カラクサイヌワラビ、サトメシダ、ホソバイヌワラビ、オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)などが見られました。
カラクサイヌワラビ Athyrium clivicola
メシダ科 メシダ属
カラクサイヌワラビは個体数が多く、いろいろな個体が見られた。包膜を観察すると鈎形の包膜が混ざる株や小羽片前側第1裂片が羽軸を覆わない株もいくつか見られ、カラクサイヌワラビが関わる雑種ではないかと疑われた。しかし胞子を観察するとどちらも正常であった。カラクサイヌワラビは短い線形の包膜だけでなく多少鈎形の包膜が混ざることがあることがあったり、小羽片前側第1裂片が羽軸を覆わない個体があったりする。
標本1 包膜はすべて線形~三日月形のカラクサイヌワラビ(鈎形が混ざらない)

包膜はすべて線形~三日月形のカラクサイヌワラビ

①②包膜はすべて線形~三日月形のカラクサイヌワラビ、1つの胞子嚢を壊したようす
標本2 鈎形の包膜が混ざるカラクサイヌワラビ

鈎形の包膜が混ざるカラクサイヌワラビ

①鈎形の包膜が混ざるカラクサイヌワラビ、葉柄基部の鱗片
②鈎形の包膜が混ざるカラクサイヌワラビ、葉柄下部の鱗片

短い線形の包膜に鈎形の包膜が混ざるカラクサイヌワラビ、1つの胞子嚢を壊したようす
標本3 小羽片前側第1裂片が羽軸にかからないカラクサイヌワラビ
フィールドではカラクサイヌワラビとほかのメシダ属のシダとの雑種ではないかと思われたが、この株もカラクサイヌワラビであった。

前側第1裂片が羽軸にかからないカラクサイヌワラビ

①前側第1裂片が羽軸にかからないカラクサイヌワラビ、羽片
②前側第1裂片が羽軸にかからないカラクサイヌワラビ、包膜
前側第1裂片が羽軸にかからないカラクサイヌワラビ、胞子を観察した羽片

①②前側第1裂片が羽軸にかからないカラクサイヌワラビ、1つの胞子嚢を壊したようす
サトメシダ Athyrium deltoidofrons
メシダ科 メシダ属
オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ) Athyrium deltoidofrons × A. vidalii
メシダ科 メシダ属
サトメシダやヤマイヌワラビが生育する森で見られました。ヤマイヌワラビに似て葉柄や中軸はえんじ色を帯びますが小羽片はヤマイヌワラビよりもずっと深く切れ込みます。標本1および標本2とも胞子のようすを確認しています。正常な胞子はほとんど確認できません。

①オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)、羽片
②オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)、包膜

①②オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)、1つの胞子を壊したようす
標本2 (オオサトメシダとサトメシダがほぼ一緒に生育していた)

オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)

オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)、羽片
オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)、胞子を観察した羽片(裏側)

①②オオサトメシダ(サトメシダ×ヤマイヌワラビ)、1つの胞子を壊したようす
カナワラビの仲間 [#j38a8bad]
リョウメンシダ、ホソバナライシダ、ナンゴクナライシダ、シノブカグマなどが見られた。
ホソバナライシダ Arachniodes borealis
オシダ科 カナワラビ属
ナンゴクナライシダ Arachniodes fargesii
オシダ科 カナワラビ属
ホソバナライシダと混生。羽軸や小羽軸上には毛が密に生え、葉柄上部には鱗片は少ないなどナンゴクナライシダの特徴が現れていたが、葉柄下部には鱗片がやや密に生え、個体数も少なかったので現地では雑種のタカヤマナライシダ(ホソバナライシダ×ナンゴクナライシダ)を疑った。羽片を採取し胞子を調べると胞子は正常であった。胞子の観察では胞子を包む外皮は壊れやすかった。

ナンゴクナライシダ

①ナンゴクナライシダ、葉柄
②ナンゴクナライシダ、葉柄下部の鱗片

①ナンゴクナライシダ、羽片
②ナンゴクナライシダ、羽軸・小羽軸上は有毛
ナンゴクナライシダ、1つの胞子嚢を壊したようす。
※ナンゴクナライシダ胞子を包む外皮は壊れやすく胞子数を確認しにくい
①ナンゴクナライシダ、胞子上面
②ナンゴクナライシダ、胞子側面
オシダの仲間 [#w06211fb]
ミヤマベニシダ、タニヘゴ、キヨズミオオクジャクなどが観察された。
タニヘゴ Dryopteris tokyoensis
オシダ科 オシダ属
湿原の中、高茎草本と一緒に生育。点在して生育するが個体数は多い。

湿原内、高茎草本と一緒に生育と共に生育するタニヘゴ
キヨズミオオクジャク Dryopteris namegatae
オシダ科 オシダ属
源流の山からは北には姫川水系、南には青木湖など千曲川水系となる。峠周辺のウエットな林縁で観察。

ウエットな林縁に生育するキヨズミオオクジャク

①キヨズミオオクジャク、葉柄基部の鱗片
②キヨズミオオクジャク、葉柄上部の鱗片

①キヨズミオオクジャク、羽片
②キヨズミオオクジャク、羽片(葉身下部)

①キヨズミオオクジャク、胞子のう群
②キヨズミオオクジャク、胞子のう群(葉身下部)
イノデの仲間
イノデの仲間は非常にたくさん生育していた。雑種もたくさん見られるのかもしれませんが限られた時間で探せたのは最も多く見られるサカゲイノデ。それ以外にツヤナシイノデ、イワシロイノデ。












































