
由比の山を歩きました。由比の山の裾野は傾斜のきつい斜面に茶畑やミカン畑が広がっていました。途中には水量のある滝もあり、滝の岩壁にはいろいろなシダが群生していました。なかなか稜線までたどり着かず到着したのは午後2時、皆さんで遅いお昼を食す。あたりはシカの食害をあまり受けていないスギ・ヒノキ林の植林地が広がりベニシダを中心にシダの森が広がっていた。イノデ類のほか、ホソバイヌワラビやタニイヌワラビ・ヒロハイヌワラビなどメシダ属の種類も多い森でした。現在、スギ・ヒノキの植林に覆われたこの森は、稜線部はやや平坦で穏やかな起伏に富みその中にはいくつかの凹地が形成されその1つの凹地の中心には湖があり地質的にも興味深いところでした(スギ・ヒノキ植林の高木に覆われ全体の地形を見渡すことはできない)。このあたりの地質は海生層のシルト岩でできており、この凹地の来歴はドリーネの可能性があると思っています。そのうちの一つの凹地をざっと見て回りましたがゆっくり観察できずすぐに陽が傾き始め、観察ももそこそこに下山を始めました。由比の駅に戻ってきたときには日が暮れていました。いつか山上の凹地周辺を再訪し、地質と関係がある植生などが観察されないかと思っています。

①由比の山の中腹にある滝
②穏やかな稜線にあるいくつかの凹地の一つ、凹地の中にある湖
イワヒバウ科の仲間
イワヒバ、カタヒバ、イヌカタヒバが観察された。
マツバラン科の仲間
マツバラン Psilotum nudum
マツバラン科 マツバラン属
海岸沿い、人家周辺の石組みにイヌカタヒバと共に生育。同行の方のお話では静岡ではそれほど珍しいものではないとのこと。

人家周辺の石組みに生育するイヌカタヒバと共に生育するマツバラン
イノモトソウ科の仲間 [#v110202b]
イノモトソウ、オオバノイノモトソウ、マツザカシダ、ナチシダ、ニシノコハチジョウシダ、オオバノアマクサシダ、アマクサシダなどが観察された。
ニシノコハチジョウシダ Pteris kiuschiuensis
イノモトソウ科 イノモトソウ属
スギ林の林床に生育。艶の無い白味を帯びた緑色の薄い葉をつける。現地ではヤワラハチジョウシダではなかと話し合ったが、羽片のつき方・羽片数や裂片最基部後側小脈のつき方などからニシノコハチジョウシダとした。静岡では珍しいようである。

スギ林の林床に生育するニシノコハチジョウシダ
①軸折れするニシノコハチジョウシダ
②ニシノコハチジョウシダ、葉身

①ニシノコハチジョウシダ、葉身
②ニシノコハチジョウシダ、葉身下部

①ニシノコハチジョウシダ、葉の裏側
②ニシノコハチジョウシダ、裂片最基部後側小脈のつき方
アマクサシダ Pteris dispar
イノモトソウ科 イノモトソウ属
オオバノアマクサシダ Pteris terminalis var. fauriei
イノモトソウ科 イノモトソウ属
この辺りの沢沿いではよく目にする。2倍体のオオバノハチジョウシダにはお目にかからなかった。

オオバノアマクサシダの幼株
コバノイシカグマ科の仲間 [#d78eaac3]
イヌシダ、コバノイシカグマ、ウスゲコバノイシカグマなどが観察された。
ウスゲコバノイシカグマ Dennstaedtia glabrescens
コバノイシカグマ科 イヌシダ属
観察された株は栄養葉のみであった。葉はコバノイシカグマに比べ細長い。

スギや照葉樹に混生林の林床に生育するウスゲコバノイシカグマ

①ウスゲコバノイシカグマ、中軸向軸側
②ウスゲコバノイシカグマ、中軸背軸側
メシダ科の仲間
シケチシダ、イヌワラビ、ヤマイヌワラビ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビ、ナチシケシダ、コシケシダ、ノコギリシダ、キヨタキシダ、オニヒカゲワラビなどが観察された。
ナチシケシダ Deparia petersenii
メシダ科 シケシダ属
果樹園の周りのやや明るい石組みや溝に生育していた。葉の大きさは30~40㎝。卵状披針形。葉は厚みがある。

果樹園の脇の明るい石組みに生育するナチシケシダ
コシケシダ Deparia petersenii f. grammitoides
メシダ科 シケシダ属
林内の渓流沿いのウエットな岩壁や滝の周りに群生していた。ナチシケシダの4倍体といわれている。葉の大きさは8~12㎝。葉は披針形。葉柄は短い。ホソバシケシダに似るが2形性はみられない。

ウエットな空気に包まれた渓流沿いの岩壁に生育するコシケシダ
シケチシダ Athyrium decurrentialatum
メシダ科 メシダ属
ウエットな林内で広く観察される。山地上部の植林地内では2回羽状複生の大形のシケチシダもしばしば観察された。

スギ林床に生育する2回羽状複生のシケチシダと2回羽状深裂のシケチシダ(右上)

2回羽状複生のシケチシダの羽片(右)と2回羽状深裂のシケチシダの羽片(左)
タニイヌワラビ Athyrium otophorum
メシダ科 メシダ属
山地上部の植林地内の林床に生育。常緑性、葉の質が厚い。小羽片の先は尖る。

スギ林床に生育するタニイヌワラビ
オニヒカゲワラビ Diplazium nipponicum
メシダ科 ノコギリシダ属
山地上部の谷筋に点在して生育。

植林地内の谷筋に生育するオニヒカゲワラビ
オシダ科の仲間
リョウメンシダ、ナンゴクナライシダ、オオカナワラビ、オニカナワラビ、ハカタシダ、ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ・テリハヤマヤブソテツ・ホソバヤマヤブソテツ)、テリハヤブソテツ、ナガバヤブソテツ、メヤブソテツ、ベニシダ、キノクニベニシダ、オオカナワラビ(ツヤナシオオイタチシダ型・アツバオオイタチシダ型)、ヒメカナワラビ、イノデモドキ、ツルデンダなどが観察された。
ナンゴクナライシダ Arachniodes amabilis var. fimbriata
オシダ科 カナワラビ属
山地上部のスギ植林地内林床に生育。ホソバナライシダに比べ、①羽軸・小羽軸上に毛が密生する。②葉柄の鱗片葉少ない。③第2羽片後側第1小羽片はそれほど長くならない。


①ナンゴクナライシダ、葉柄の鱗片
②ナンゴクナライシダ、葉柄下部の鱗片
コバノカナワラビ Arachniodes sporadosora
オシダ科 カナワラビ属
こんどコバノカナワラビに出会ったら、根茎の写真を撮影しようと思っていた。今回は小さな滝のそばの斜面に生育している株に出会う。根茎を掘り出し、撮影後埋め戻す。予想通り根茎は塊状(太い塊状にごく短く這う)であった。なかなか根茎の形状まで調べることはないが、伊豆では今までコバノカナワラビとされていたもので根茎が細く長く這うツクシカナワラビ(有性生殖種)が確認されている。今後も根茎のようすを観察してみたい。

林内の沢筋に生育するコバノカナワラビ
オオカナワラビ Arachniodes amabilis var. fimbriata
オシダ科 カナワラビ属
いくつかの葉形をしたオオカナワラビに出会う。すべて胞子のようすを観察したが有性生殖種であった。オオカナワラビとコバノカナワラビ(テンリュウカナワラビ)あるいはオオカナワラビとホソバカナワラビ(テンリュウカナモドキ)等雑種との区別が難しいときがあるが、オオカナワラビの葉形の特徴をよく把握しておく必要がある。
オオカナワラビ1
小形のオオカナワラビ。葉身葉30㎝程度。最下羽片後側第1小羽片は1つで短い。

オオカナワラビ1

①オオカナワラビ1、胞子上面
②オオカナワラビ1、胞子側面
オオカナワラビ2
大形のオオカナワラビ。最下羽片後側第1小羽片は1つで長い。

オオカナワラビ2

①オオカナワラビ2、羽片および頂羽片
②オオカナワラビ2、小羽片

①オオカナワラビ2、胞子のう群
②オオカナワラビ2、1つの胞子のうを壊したようす
オオカナワラビ3
大形のオオカナワラビ。葉身下部羽片後側第1・第2小羽片は長い。

オオカナワラビ3、大形。葉身下部羽片後側第1・第2小羽片は長い

①オオカナワラビ3、上の写真と同一株。より大きく羽片間は広い葉
②オオカナワラビ3、上の写真と同一株。胞子のう群
キノクニベニシダ Dryopteris kinokuniensis
オシダ科 オシダ属
スギや照葉樹が混生する林床でときどき見られた。

スギや照葉樹が混生する林床に生育するキノクニベニシダ














