海のそばまで山が迫った由比。2025年11月13日 静岡 由比
 由比の山を歩きました。なかなか稜線までたどり着かず到着したのは午後2時、皆さんで遅いお昼を食す。あたりはシカの食害をあまり受けていない植林地が広がりベニシダを中心にシダの森が広がっていた。ホソバイヌワラビやタニイヌワラビ・ヒロハイヌワラビなどメシダ属の種類も多くゆっくり観察したいところであったがすぐに陽が傾き始め観察もそこそこに下山を始める。由比の駅に戻ってきたときには日が暮れていた。

イワヒバウ科の仲間

イワヒバ、カタヒバ、イヌカタヒバが観察された。

マツバラン科の仲間

マツバラン Psilotum nudum
マツバラン科 マツバラン属

海岸沿い、人家周辺の石組みにイヌカタヒバと共に生育。同行の方のお話では静岡ではそれほど珍しいものではないとのこと。
人家周辺の石組みに生育するイヌカタヒバと共に生育するマツバラン。2025年11月13日 静岡 由比
人家周辺の石組みに生育するイヌカタヒバと共に生育するマツバラン

マツバラン、胞子嚢。2025年11月13日 静岡 由比
マツバラン、胞子嚢




イノモトソウ科の仲間

イノモトソウ、オオバノイノモトソウ、マツザカシダ、ナチシダ、ニシノコハチジョウシダ、オオバノアマクサシダ、アマクサシダなどが観察された。

ニシノコハチジョウシダ Pteris kiuschiuensis
イノモトソウ科 イノモトソウ属

スギ林の林床に生育。艶の無い白味を帯びた緑色の薄い葉をつける。現地ではヤワラハチジョウシダではなかと話し合ったが、羽片のつき方・羽片数や裂片最基部後側小脈のつき方などからニシノコハチジョウシダとした。静岡では珍しいようである。
スギ林の林床に生育するニシノコハチジョウシダ。2025年11月13日 静岡 由比
スギ林の林床に生育するニシノコハチジョウシダ

ニシノコハチジョウシダ、葉柄基部にはほとんど鱗片はつけていない。2025年11月13日 静岡 由比
ニシノコハチジョウシダ、葉柄基部

ニシノコハチジョウシダ、葉柄と中軸の境で軸折れしている。2025年11月13日 静岡 由比 ニシノコハチジョウシダ、羽片基部は切形~心形。2025年11月13日 静岡 由比  
①軸折れするニシノコハチジョウシダ
②ニシノコハチジョウシダ、葉身

ニシノコハチジョウシダ、羽片数は多く、羽片は中軸に対して開出してつく。2025年11月13日 静岡 由比 ニシノコハチジョウシダ、最下羽片後側第1・第2小羽片は長く伸びる。2025年11月13日 静岡 由比
①ニシノコハチジョウシダ、葉身
②ニシノコハチジョウシダ、葉身下部

ニシノコハチジョウシダ、葉の辺縁が巻き込むようにして胞子嚢をつける。2025年11月13日 静岡 由比 ニシノコハチジョウシダ、裂片最基部後側小脈は羽軸と裂片中肋の接点あたりから出る。2025年11月13日 静岡 由比
①ニシノコハチジョウシダ、葉の裏側
②ニシノコハチジョウシダ、裂片最基部後側小脈のつき方




アマクサシダ Pteris dispar
イノモトソウ科 イノモトソウ属

あまりウエットではない林縁の崖などではよく目にする。
あまりウエットではない林縁の崖に生育するアマクサシダ。2025年11月13日 静岡 由比




オオバノアマクサシダ Pteris terminalis var. fauriei
イノモトソウ科 イノモトソウ属

この辺りの沢沿いではよく目にする。2倍体のオオバノハチジョウシダにはお目にかからなかった。
白い斑が入ったオオバノアマクサシダの幼株。2025年11月13日 静岡 由比
オオバノアマクサシダの幼株




コバノイシカグマ科の仲間

イヌシダ、コバノイシカグマ、ウスゲコバノイシカグマなどが観察された。

ウスゲコバノイシカグマ Dennstaedtia glabrescens
コバノイシカグマ科 イヌシダ属

観察された株は栄養葉のみであった。葉はコバノイシカグマに比べ細長い。
スギや照葉樹に混生林の林床に生育するウスゲコバノイシカグマ。2025年11月13日 静岡 由比
スギや照葉樹に混生林の林床に生育するウスゲコバノイシカグマ

ウスゲコバノイシカグマ、葉柄下部。2025年11月13日 静岡 由比 
ウスゲコバノイシカグマ、葉柄下部

ウスゲコバノイシカグマ、中軸向軸側。2025年11月13日 静岡 由比 ウスゲコバノイシカグマ、中軸背軸側。2025年11月13日 静岡 由比
①ウスゲコバノイシカグマ、中軸向軸側
②ウスゲコバノイシカグマ、中軸背軸側




メシダ科の仲間

シケチシダ、イヌワラビ、ヤマイヌワラビ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビ、ナチシケシダ、コシケシダ、ノコギリシダ、キヨタキシダ、オニヒカゲワラビなどが観察された。

ナチシケシダ Deparia petersenii
メシダ科 シケシダ属

果樹園の周りのやや明るい石組みや溝に生育していた。葉の大きさは30~40㎝。卵状披針形。葉は厚みがある。
果樹園の脇の石組みに生育するナチシケシダ。2025年11月13日 静岡 由比
果樹園の脇の明るい石組みに生育するナチシケシダ

ナチシケシダ、包膜の辺縁は和紙を裂いた様にほつれる。2025年11月13日 静岡 由比
ナチシケシダ、包膜




コシケシダ Deparia petersenii f. grammitoides
メシダ科 シケシダ属

林内の渓流沿いのウエットな岩壁や滝の周りに群生していた。ナチシケシダの4倍体といわれている。葉の大きさは8~12㎝。葉は披針形。葉柄は短い。ホソバシケシダに似るが2形性はみられない。
ウエットな空気に包まれた渓流沿いの岩壁に生育するコシケシダ。2025年11月13日 静岡 由比
ウエットな空気に包まれた渓流沿いの岩壁に生育するコシケシダ

コシケシダ、胞子のう群。2025年11月13日 静岡 由比




シケチシダ Athyrium decurrentialatum
メシダ科 メシダ属

ウエットな林内で広く観察される。山地上部の植林地内では2回羽状複生の大形のシケチシダもしばしば観察された。
スギ林床に生育する2回羽状複生のシケチシダと2回羽状深裂のシケチシダ(右上)。2025年11月13日 静岡 由比
スギ林床に生育する2回羽状複生のシケチシダと2回羽状深裂のシケチシダ(右上)

2回羽状複生のシケチシダの羽片(右)と2回羽状深裂のシケチシダの羽片(左)。2025年11月13日 静岡 由比
2回羽状複生のシケチシダの羽片(右)と2回羽状深裂のシケチシダの羽片(左)




タニイヌワラビ Athyrium otophorum
メシダ科 メシダ属

山地上部の植林地内の林床に生育。常緑性、葉の質が厚い。小羽片の先は尖る。
スギ林床に生育するタニイヌワラビ。2025年11月13日 静岡 由比
スギ林床に生育するタニイヌワラビ

タニイヌワラビ、胞子のう群。2025年11月13日 静岡 由比
タニイヌワラビ、胞子のう群




オニヒカゲワラビ Diplazium nipponicum
メシダ科 ノコギリシダ属

山地上部の谷筋に点在して生育。
植林地内の谷筋に生育するオニヒカゲワラビ。2025年11月13日 静岡 由比
植林地内の谷筋に生育するオニヒカゲワラビ

オニヒカゲワラビ、胞子のう群。2025年11月13日 静岡 由比
オニヒカゲワラビ、胞子のう群




オシダ科の仲間

リョウメンシダ、ナンゴクナライシダ、オオカナワラビ、オニカナワラビ、ハカタシダ、ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ・テリハヤマヤブソテツ・ホソバヤマヤブソテツ)、テリハヤブソテツ、ナガバヤブソテツ、メヤブソテツ、ベニシダ、キノクニベニシダ、オオカナワラビ(ツヤナシオオイタチシダ型・アツバオオイタチシダ型)、ヒメカナワラビ、イノデモドキ、ツルデンダなどが観察された。

ナンゴクナライシダ Arachniodes amabilis var. fimbriata
オシダ科 カナワラビ属

山地上部のスギ植林地内林床に生育。ホソバナライシダに比べ、①羽軸・小羽軸上に毛が密生する。②葉柄の鱗片葉少ない。③第2羽片後側第1小羽片はそれほど長くならない。
山地上部のスギ植林地内林床に生育するナンゴクナライシダ。2025年11月13日 静岡 由比

ナンゴクナライシダ、葉柄の鱗片は少ない。2025年11月13日 静岡 由比 ナンゴクナライシダ、葉柄下部の鱗片。2025年11月13日 静岡 由比
①ナンゴクナライシダ、葉柄の鱗片
②ナンゴクナライシダ、葉柄下部の鱗片

ナンゴクナライシダ、羽軸・小羽軸上に密生する毛。2025年11月13日 静岡 由比
ナンゴクナライシダ、羽軸・小羽軸上に密生する毛




コバノカナワラビ Arachniodes sporadosora
オシダ科 カナワラビ属

こんどコバノカナワラビに出会ったら、根茎の写真を撮影しようと思っていた。今回は小さな滝のそばの斜面に生育している株に出会う。根茎を掘り出し、撮影後埋め戻す。予想通り根茎は塊状(太い塊状にごく短く這う)であった。なかなか根茎の形状まで調べることはないが、伊豆では今までコバノカナワラビとされていたもので根茎が細く長く這うツクシカナワラビ(有性生殖種)が確認されている。今後も根茎のようすを観察してみたい。
林内の沢筋に生育するコバノカナワラビ。2025年11月13日 静岡 由比
林内の沢筋に生育するコバノカナワラビ

コバノカナワラビ、根茎はごく短く這い塊状に近い。2025年11月13日 静岡 由比 
半分掘り起こしたコバノカナワラビの根茎 




オオカナワラビ Arachniodes amabilis var. fimbriata
オシダ科 カナワラビ属

いくつかの葉形をしたオオカナワラビに出会う。すべて胞子のようすを観察したが有性生殖種であった。
オオカナワラビ1
小形のオオカナワラビ。葉身葉30㎝程度。最下羽片後側第1小羽片は1つで短い。
オオカナワラビ1、小形。2025年11月13日 静岡 由比
オオカナワラビ1

オオカナワラビ1、胞子のう群。2025年11月13日 静岡 由比 
オオカナワラビ1、胞子のう群

オオカナワラビ1、胞子数は57個程度確認。胞子の大きさ・形は整い有性生殖種と推定。2025年11月13日 静岡 由比
オオカナワラビ1、1つの胞子のうを壊したようす

オオカナワラビ1、胞子上部。2025年11月13日 静岡 由比 オオカナワラビ1、胞子側面。2025年11月13日 静岡 由比
①オオカナワラビ1、胞子上面
②オオカナワラビ1、胞子側面




オオカナワラビ2
大形のオオカナワラビ。最下羽片後側第1小羽片は1つで長い。
オオカナワラビ2、大形。最下羽片後側第1小羽片は1つで長い。2025年11月13日 静岡 由比
オオカナワラビ2

オオカナワラビ2、羽片および頂羽片。2025年11月13日 静岡 由比 オオカナワラビ2、小羽片。2025年11月13日 静岡 由比
①オオカナワラビ2、羽片および頂羽片
②オオカナワラビ2、小羽片

オオカナワラビ2、胞子のう群。2025年11月13日 静岡 由比 オオカナワラビ2、胞子数は62個程度確認。胞子の大きさ・形は整い有性生殖種と推定。2025年11月13日 静岡 由比
①オオカナワラビ2、胞子のう群
②オオカナワラビ2、1つの胞子のうを壊したようす




オオカナワラビ3
大形のオオカナワラビ。葉身下部羽片後側第1・第2小羽片は長い。
オオカナワラビ3、大形。葉身下部羽片後側第1・第2小羽片は長い。2025年11月13日 静岡 由比
オオカナワラビ3、大形。葉身下部羽片後側第1・第2小羽片は長い

上の写真と同一株で葉は大きく羽片間はまのびしている。2025年11月13日 静岡 由比 オオカナワラビ3、胞子のう群。2025年11月13日 静岡 由比
①オオカナワラビ3、上の写真と同一株。より大きく羽片間は広い葉
②オオカナワラビ3、上の写真と同一株。胞子のう群

オオカナワラビ3、胞子数葉60個近く確認でき、胞子の大きさ・形は整い有性生殖種と推定。2025年11月13日 静岡 由比
オオカナワラビ3、1つの胞子のうを壊したようす




キノクニベニシダ Dryopteris kinokuniensis
オシダ科 オシダ属

スギや照葉樹が混生する林床でときどき見られた。
スギや照葉樹が混生する林床に生育するキノクニベニシダ。2025年11月13日 静岡 由比
スギや照葉樹が混生する林床に生育するキノクニベニシダ

キノクニベニシダ、葉身下部。2025年11月13日 静岡 由比
キノクニベニシダ、葉身下部




ヒメイタチシダ Dryopteris sacrosancta
オシダ科 オシダ属

由比の街に下る急傾斜の林内の山道沿いに生育。陽が落ちた後で鱗片などは撮影できなかった。
夕方近く林内の山道沿いで観察。2025年11月13日 静岡 由比
夕方近く林内の山道沿いで観察




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