Top / 旅の地のシダ / 平成27年8月6日(木)~10日(月)八丈島
以前、八丈島に移住されていたひろちょん氏に案内していただき、八丈島の各所を巡りいろいろなシダを観察しました。観察したシダの一覧の次におおよその生育環境を分けてシダを紹介いたします。また、機会があれば、時間をかけてゆっくり歩いてみたいところばかりでした。今回は、胞子を観察していないので、同定には限界がありました。もし、また訪れる機会があれば胞子のようすも探察したいと思います。
ここでは順次いろいろなシダを紹介させていただきたいと思います。
科名 | 属名 | 種名 |
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ヒカゲノカズラ科 LYCOPODIACEAE | コスギラン属 Huperzia | トウゲシバHuperzia serrata ヒロハトウゲシバHuperzia serrata f. intermedia ナンカクランHuperzia fordii |
ヒカゲノカズラ属 Lycopodium | ヒカゲノカズラ Lycopodium clavatum | |
ミズスギ属Palhinhaea | ミズスギPalhinhaea cernua | |
イワヒバ科 SELAGINELLACEAE | イワヒバ属 Selaginella | イヌカタヒバ Selaginella moellendorffii ヒメムカデクラマゴケSelaginella lutchuensis タチクラマゴケSelaginella nipponica オニクラマゴケSelaginella doederleinii コウズシマオニクラマゴケSelaginella doederleinii Hieron. var. opaca Seriz. |
トクサ科 EQUISETACEAE | トクサ属 Equisetum | スギナEquisetum arvense イヌスギナEquisetum palustre |
ハナヤスリ科 OPHIOGLOSSACEAE | ハナワラビ属 Botrychium | シチトウハナワラビBotrychium atrovirens |
ハナヤスリ属 Ophioglossum | コヒロハハナヤスリ Ophioglossum petiolatum | |
マツバラン科 PSILOTACSAE | マツバラン属 Psilotum | マツバラン Psilotum nudum |
リュウビンタイ科 MARATTIACEAE | リュウビンタイ属Angiopteris | リュウビンタイAngiopteris lygodiifolia |
ゼンマイ科 OSMUNDACEAE | ゼンマイ属 Osmunda | ゼンマイOsmunda japonica |
コケシノブ科 HYMENOPHYLLA | コケシノブ属 Hymenophyllum | コウヤコケシノブHymenophyllum barbatum ホソバコケシノブHymenophyllum polyanthos コケシノブ Hymenophyllum wrightii |
アオホラゴケ属 Crepidomanes | ウチワゴケCrepidomanes minutum アオホラゴケCrepidomanes latealatum | |
ハイホラゴケ属 Vandenboschia | ハイホラゴケVandenboschia kalamocarpa オオハイホラゴケ Vandenboschia striata | |
ウラジロ科GLEICHENIACEAE | コシダ属Dicranopteris | コシダDicranopteris linearis |
ウラジロ属Gleichenia | ウラジロGleichenia japonica | |
ヤブレガサウラボシ科 DIPTERIDACEAE | スジヒトツバ属 Cheiropleuria | スジヒトツバ Cheiropleuria integrifolia |
カニクサ科 LYGODIACEAE | カニクサ属 Lygodium | カニクサLygodium japonicum |
サンショウモ科 SALVINIACEAE | サンショウモ属 Salvinia | サンショウモ Salvinia natans |
キジノオシダ科 PLAGIOGYRIACEAE | キジノオシ属 Plagiogyria | キジノオシダPlagiogyria japonica タカサゴキジノオPlagiogyria adnata オオキジノオPlagiogyria euphlebia |
ヘゴ科CYATHEACEAE | ヘゴ属Cyathea | ヘゴ Cyathea spinulosa ヒカゲヘゴ Cyathea lepifera マルハチ Cyathea mertensiana |
ホングウシダ科LINDSAEACEAE | エダウチホングウシダ属 Lindsaea | エダウチホングウシダLindsaea chienii シンエダウチホングウシダ Lindsaea orbiculata var. commixta |
ホラシノブ属Odontosoria | ホラシノブ Odontosoria chinensis ハマホラシノブOdontosoria biflora | |
ホングウシダ属 Osmolindsaea | ホングウシダOsmolindsaea odorata サイゴクホングウシダ Osmolindsaea japonica | |
コバノイシカグマ科 DENNSTAEDTIACEAE | コバノイシカグマ属 Dennstaedtia | コバノイシカグマDennstaedtia scabra |
ユノミネシダ属Histiopteris | ユノミネシダHistiopteris incisa | |
イワヒメワラビ属Hypolepis | イワヒメワラビ Hypolepis punctata | |
フモトシダ属 Microlepia | イシカグマ Microlepia strigosa | |
ワラビ属Pteridium | ワラビ Pteridium aquilinum subsp. japonicum | |
イノモトソウ科PTERIDACEAE | イノモトソウ属Pteris | ナチシダ Pteris wallichiana ハチジョウシダPteris fauriei アマクサシダ Pteris semipinnata |
ホウライシダ属 Adiantum | ホウライシダ Adiantum capillus-veneris | |
シシラン属 Haplopteris | シシラン Haplopteris flexuosa | |
チャセンシダ科 ASPLENIACEAE | チャセンシダ属 Asplenium | ナンカイヌリトラノオ ヌリトラノオ?Asplenium normale オオタニワタリ Asplenium antiquum コウザキシダ Asplenium ritoense |
ホウビシダ属 Hymenasplenium | ナンゴクホウビシダHymenasplenium murakami-hatanakae | |
ヒメシダ科 THELYPTERIDACEAE | ヒメワラビ属 Macrothelypteris | ヒメワラビThelypteris torresiana var. calvata アラゲヒメワラビThelypteris torresiana var. torresiana |
ヒメシダ属 Thelypteris | ケホシダThelypteris parasitica アイノコホシダ(ケホシダ×ホシダ)Thelypteris acuminata×T parasitica ハシゴシダ Thelypteris glanduligera コハシゴシダ Thelypteris angustifrons ハリガネワラビの仲間(八丈島type Thelypteris japonica ヤワラシダ Thelypteris laxa ミゾシダThelypteris pozoi subsp. mollissima | |
シシガシラ科BLECHNACEAE | シシガシラ属Blechnum | シシガシラ Blechnum niponicum |
コモチシダ属Woodwardia | ハチジョウカグマWoodwardia orientalis var. formosana | |
メシダ科 ATHYRIACEAE | ウラボシノコギリシダ属 Anisocampium | イヌワラビ Anisocampium niponicum |
メシダ属Athyrium | ホソバイヌワラビ Athyrium iseanum トガリバイヌワラビ Athyrium iseanum タニイヌワラビ Athyrium otophorum ヤマイヌワラビ Athyrium vidalii ツクシイヌワラビAthyrium kuratae サトメシダ Athyrium deltoidofrons | |
シケシダ属Deparia | 八丈島のシケシダ属は大変面白い。低地ではナチシケシダが優勢であるが山地ではいろいろなシケシダの仲間が見られ、それぞれが関係しあって雑種を作っているようである。あらためていろいろなシケシダ属の仲間について胞子のようすも調べてみたい。 ホソバシケシダ Deparia conilii セイタカシケシダ Deparia dimorphophylla シケシダ Deparia japonica シケシダあるいはタマシケシダ(フモトシケシダ×シケシダ) ヘラシダ Deparia lancea ナチシケシダ Deparia petersenii コシケシダ(ナチシケシダ4倍体)Deparia petersenii var. grammitoides フモトシケシダ Deparia pseudoconilii サツマシケシダか(ナチシケシダ×シケシダ)Deparia ×birii コサツマシケシダか(コシケシダ×シケシダ)Deparia japonica x D. petersenii var. grammitoides セイタカナチシケシダ(セイタカシケシダ×ナチシケシダ)Deparia dimorphophylla x D. petersenii ノコギリヘラシダ(ヘラシダ×ナチシケシダ)Deparia ×tomitaroanum ナチフモトシケシダか(フモトシケシダ×ナチシケシダ)Deparia petersenii x D. pseudoconilii ナチフモトシケシダか(フモトシケシダ×ナチシケシダ)Deparia petersenii x D. pseudoconilii | |
ノコギリシダ属Diplazium | ノコギリシダ Diplazium wichurae シロヤマシダ(平地および低山type) Diplazium hachijoense ミハラシロヤマシダ:仮称(三原山山頂) ヒロハノコギリシダ Diplazium dilatatum | |
オシダ科 DRYOPTERIDACEAE | ヤブソテツ属 Cyrtomium | 科学博物館の研究では八丈島には3倍体無融合生殖種のオニヤブソテツと2倍体ヒメオニヤブソテツの仲間の2種類のオニヤブソテツの仲間が生育している。外観や生育環境から以下4形に区別を試みたが全てまだ胞子のようすを調べていない。次回訪れる機会があればぜひ胞子のようすを観察してみたい。 オニヤブソテツの仲間Ⅰ(小形・海食崖生育) オニヤブソテツの仲間Ⅱ(最下羽片未発達・鋸歯小・海岸) オニヤブソテツの仲間Ⅲ(最下羽片発達・鋸歯あり・海岸) オニヤブソテツの仲間Ⅳ(ナガバヤブソテツ似・林内生育) |
イノデ属 Polystichum | イノデ Polystichum polyblepharum ミウライノデPolystichum ×miuranum ジュウモンジシダPolystichum tripteron | |
カナワラビ属 Arachniodes | オオカナワラビArachniodes amabilis var. fimbriata ハチジョウカナワラビArachniodes davalliaedormis リョウメンシダ ホソバカナワラビArachniodes aristata | |
オシダ属 Dryopteris | ハチジョウベニシダ Dryopteris caudipinna ベニシダDryopteris etythrosora トウゴクシダ Dryopteris nipponensis キノクニベニシダ Dryopteris kinokuniensis イワイタチシダ Dryopteris saxifraga イヌイワイタチシダ Dryopteris saxifragivaria ナンカイイタチシダDryopteris varia ヤマイタチシダ Dryopteris bissetiana オオイタチシダ Dryopteris pacifica ・アツバオオイタチシダtype ・アオニオオイタチシダtype ・ツヤナシオオイタチシダtype ・オオイタチシダ似のナンカイイタチシダの仲間 ベニオオイタチシダDryopteris erythrovaria ナガバノイタチシダ Dryopteris sparsa イヌタマシダ Dryopteris hayatae リュウキュウイタチシダDryopteris sparsa var. ryukyuensis | |
カツモウイノデ属 Ctenitis | カツモウイノデ Ctenitis subglandulosa | |
アツイタ属 Elaphoglossum | アツイタ Elaphoglossum yoshinagae ヒロハアツイタ Elaphoglossum tosaense | |
タマシダ科NEPHROLEPIDACEAE | タマシダ属Nephrolepis | タマシダ Nephrolepis cordifolia |
ウラボシ科 POLYPODIACEAE | ミツデウラボシ属Crypsinus | ミツデウラボシ Selliguea hastata |
ヒトツバ属 Pyrrosia | ヒトツバPyrrosia lingua | |
マメヅタ属 Lemmaphyllum | マメヅタLemmaphyllum macrophyllum | |
ヤノネシダ属Lepidomicrosorium | ヌカボシクリハラン Lepidomicrosorium superficiale | |
ノキシノブ属Lepisorus | ノキシノブLepisorus thunbergianus ハチジョウウラボシ Lepisorus hachijoensis | |
オオクボシダ属Micropolypodium | オオクボシダ Micropolypodium okuboi | |
ヒメウラボシ属Oreogrammitis | ヒロハヒメウラボシ Oreogrammitis nipponica |
目次
海岸線で
生育環境
いろいろなオニヤブソテツの仲間
オニヤブソテツの仲間A
オニヤブソテツの仲間B
ハマホラシノブ
アイホラシノブ
ホウライシダ
海岸寄りの渓谷で
生育環境
ケホシダ
アイノコホシダ
ナチフモトシケシダ
オオハイホラゴケ葉柄・中軸波打つtype
ナンゴクホウビシダ
イシカグマ
ノコギリヘラシダ
リュウビンタイ
オオタニワタリ
ヘゴ
タマシダ
山地中流域の渓谷で
生育環境
シロヤマシダ
セイタカナチシケシダ
ジュウモンジシダ
ノコギリシダ
アカメクジャク(ノコギリシダ×イヨクジャク)
サイゴクホングウシダ
オニクラマゴケコウズシマクラマゴケ
タチクラマゴケ
タカサゴキジノオ
オオキジノオ
オオカナワラビ
オオカナワラビ(最下羽片未発達・葉身下部小羽片全縁・包膜有毛)
イヌタマシダ
コウヤコケシノブ
ウチワゴケ
中流域の滝で
生育環境
コシケシダ(ナチシケシダ4倍体)
シケシダ
コサツマシケシダ※仮称(コシケシダ×シケシダ)}
ユノミネシダ
コシダ
山の裾野や海岸付近の疎林で
生育環境
オニヤブソテツの仲間C
ヒメムカデクラマゴケ(ハチジョウヒメムカデクラマゴケ※仮称)
シチトウハナワラビ
ナチシダ
ミウライノデ
毛の長いヒメワラビか
ハチジョウシダ
ヤマイタチシダ
ナンカイイタチシダ
山地林床で
生育環境
トウゲシバ
オニヤブソテツの仲間D
イノデ
キジノオシダ
エダウチホングウシダ
シンエダウチホングウシダ
アマクサシダ
スジヒトツバ
ヒトツバ
ハチジョウベニシダ
ベニオオイタチシダ
オオイタチシダ
コハシゴシダ
ハチジョウカナワラビ
ナガバノイタチシダ ?
シシガシラ
マメヅタ
ウラジロ
水辺で
民家の周辺で
生育環境
カツモウイノデ
ハチジョウカグマ
ヘラシダ
ナチシケシダ
ホラシノブ
ミゾシダ
スギナ
ホシダ
コヒロハハナヤスリ
八丈富士、外側で
生育環境
マツバラン
ナンカクラン
コウザキシダ
ヒロハノコギリシダ
ホングウシダ
ミズスギ
山地上部で(三原山・八丈富士)
生育環境
オニトウゲシバ
不明な大形のノコギリシダの仲間
ヌカボシクリハラン
シシラン
ナンカイヌリトラノオヌリトラノオ
トウゴクシダキノクニベニシダ
ハシゴシダ
タニイヌワラビ
ツクシイヌワラビ
ハチジョウウラボシ
オオハイホラゴケ
ヒロハアツイタ
アツイタ
イワイタチシダ
イヌイワイタチシダ
タマシケシダ(シケシダ×フモトシケシダ)
ナチフモトシケシダ(ナチシケシダ×フモトシケシダ)
フモトシケシダ 包膜細鋸歯 (ナチフモトシケシダの可能性もある)
フモトシケシダ 包膜全縁
サトメシダ
ホソバイヌワラビ
ヤマイヌワラビ(羽片の柄の長いtype)
ヤワラシダ(包膜が辺縁寄りにつくtype)
ヒロハヒメウラボシ
高層湿原など湿潤な環境で
生育環境
コケシノブ
オオクボシダ
ハリガネワラビ(胞子のう群は中間・包膜の毛は長いtype)
コバノイシカグマ
ヒカゲノカズラ
八丈富士中央火口丘内、2重のクレータの中「小穴」で
生育環境
いつか歩いてみたいです。
おわりに [#z2de550c]
海岸線で
八丈島の海岸は砂浜はほとんどないようです。岩壁や大小の岩や石がゴロゴロした海岸が多いようです。外海に面した岩壁では包膜の白いオニヤブソテツの仲間(ハチジョウヒメオニヤブソテツ:仮称)、ハマホラシノブ、ホウライシダなどが見られました。
・
いろいろなオニヤブソテツの仲間
八丈島ではいろいろな環境でオニヤブソテツの仲間を観察しました。どれも胞子は観察していないので、正確なところは分かりません。外観だけで分けると個体変異が多くて切りがありませんが、ここでは生育環境の違いなどを考慮して大きく4グループに括りました。各グループの中にも撮影した個体が違う場合は標本1、標本2などと分けました。
オニヤブソテツの仲間A:海岸岩場・崖
オニヤブソテツの仲間B:海岸周辺の石垣・防波堤など構造物周辺
オニヤブソテツの仲間C:海岸林内林床
オニヤブソテツの仲間D:山地樹林内林床
八丈島には文献では2倍体有性生殖種・3倍体無融合生殖種が観察されています。ただし、文献にも記載されているように八丈島の2倍体有性生殖種は本州の2倍体有性生殖種とは様子が少し違うようで、この点も興味深いところです。また4倍体有性生殖種は今まで確認されいませんでしたが、今回、外観が4倍体有性生殖種に酷似する個体を観察することができました(ただし包膜の中心は黒くなく白色)。これらの種を親とする雑種も生育していることが考えられます。ここでは観察した個体の特徴とその生育環境を紹介します。いつかそれぞれの個体の胞子を調べてみたいと思います。
・
オニヤブソテツの仲間A
海岸の切り立った崖や岩場に生育。30~40㎝程度やや小形で、葉は厚く光沢あり、鋸歯は少ない。包膜白色。
(1)オニヤブソテツの仲間A
(2)オニヤブソテツの仲間A、葉身
・
オニヤブソテツの仲間B
低木や灌木がまばらに生える海岸周辺の斜面の草付き地に生育。60~80㎝程度大形で、葉は厚く光沢あり、鋸歯がある。最下羽片はあまり発達しない。包膜白色。
(1)オニヤブソテツの仲間B
(2)オニヤブソテツの仲間B、葉身下部羽片
ハマホラシノブ
海岸の岩壁~海岸から500mほど離れた範囲、溶岩や凝灰岩の崖に群生していました。扇形に広がる裂片の幅が広く、葉は非常に厚く硬いので触ればホラシノブとの違いが分かります。八丈島では内陸部~海岸部でホラシノブも観察できました。アイホラシノブは一見ハマホラシノブのように見えますが、葉の厚さはハマホラシノブの半分ほどで島内では見比べられるので区別が容易です。アイホラシノブだけを見ると裂片の幅が広いのでハマホラシノブにしてしまいそうです。
岩壁に群生するハマホラシノブ(上左)
ハマホラシノブ(上右)
ハマホラシノブ、包膜(上左)
一緒に生育するホラシノブアイホラシノブ:左(2015年12月訂正)とハマホラシノブ:右(上右)
・
ホウライシダ
海岸のややウエットな岩場や海岸近くの日陰の崖で見られました。葉身は10㎝程度で、葉身の基部だけが2回羽状に分かれ、あとは単羽状の小さな株がほとんどでした。
海岸の岩壁に群生するホウライシダ(上左)
ホウライシダ、葉身(上右)
林内の崖に生育するホウライシダ(上左)
ホウライシダ、根茎(上右)
ホウライシダ、羽片(上左)
ホウライシダ、胞子のう群(上右)
海岸近くの渓谷で
八丈島は海岸近くまで溶岩が流れ下り、海岸付近で台地上になっているところが多く見られました。溶岩の台地を削って海の近くまで渓谷が続いているところでは、滝や急流があり、ウエットな空間を作り出しています。遠くから見てもそれと分かるヘゴの林が目につきます。そのほかの大型のシダとしてはリュウビンタイやオオタニワタリが生育し、ウエットな岩壁にはナンゴクホウビシダやハイホラゴケなどが見られました。林床に生育するものはケホシダやアイノコケホシダを見ることができました。ナチフモトシケシダやノコギリヘラシダも観察できました。そのほかハチジョウシダやハチジョウカグマ、ハチジョウカナワラビが見られました。ここではイシカグマはあたり一帯に群生するわけではなく、個体数はそれほど多くありませんでした。
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ケホシダ
ケホシダとアイノコホシダは同じ範囲に生えていました。
(1)ケホシダ
(2)ケホシダ、葉の先端
アイノコホシダ
ケホシダとホシダの雑種と推定される。両親の特徴がよく表れている。頂羽片がはっきりし、葉の表面にはケホシダほどではないが短毛が生える。胞子は不充実なようで胞子嚢ははじけず固まっている。
(1)アイノコホシダ
(2)アイノコホシダ 、はじけない胞子のう
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ
三原山と硫黄滝への登山道や裏見ヶ滝などで見られました。シケシダの仲間は外観だけでは判断が難しいですが、ナチフモトシケシダは多いように思います。
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ(上左)
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ、葉身下部(上右)
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ、葉柄下部(上左)
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ、葉柄下部の鱗片(上右)
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ、羽片裏側(上左)
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ、胞子のう群(上右)
ナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ、包膜(上左、上右)
オオハイホラゴケ
海岸近くの滝の周辺、岩壁の基部に群生。大きさは12~15㎝。根茎の毛は長く、赤褐色~黒褐色で密に生える。
次に訪れる機会があれが、胞子の観察を行い、有性生殖種か無融合生殖種あるいは雑種であるか確認してみたい。
ホウビシダナンゴクホウビシダ
三原山海岸近くの滝やホタル水路の岩場などで観察。胞子のう群は辺縁寄りにつくが辺縁に接するとまではいかない。羽片の形も含め本土のもの(神武寺産)とそれほど変わらないように見える。八丈島のシダリストにナンゴクホウビシダが記載されているので、とりあえずナンゴクホウビシダとする。
標本1 海岸近くの滝の周辺の岩壁
ナンゴクホウビシダ
ナンゴクホウビシダ、羽片(上左)
ナンゴクホウビシダ、胞子のう群(上右)
イシカグマ
ノコギリヘラシダ(ヘラシダ×ナチシケシダ)
ノコギリヘラシダはヘラシダとナチシケシダの雑種と推定される。八丈島はナチシケシおよびヘラシダがいたるところに繁茂しています。三原山登山道、ほたる水路などところどころで観察することができました。
ノコギリヘラシダ(上左)
ノコギリヘラシダ、新芽(上右)
ノコギリヘラシダ、胞子のう群(上左)
ノコギリヘラシダ、包膜(上右)
・
オオタニワタリ
リュウビンタイ
ヘゴ
タマシダ
タマシダ、幼株(上左)
タマシダ、幼株の羽片(上右)
山地・中流域の渓谷で
海岸線より中に入った中流域の渓谷ではシロヤマシダが大群落を形成していました。大きいものでは2m近くなります。そのほかナチシケシダ、セイタカナチシケシダ、最下羽片の発達しないオオカナワラビ、ノコギリシダやアカメクジャク(ノコギリシダ×イヨクジャク)などが見られました。
ややウエットな林床や山道沿いの土手ではコウズシマクラマゴケ・タチクラマゴケ・タカサゴキジノオ・アイキジノオ(タカサゴキジノオ×キジノオシダ)・シシガシラ・ウラジロなどが見られました。
渓谷沿いの大きな転石の水際にはサイゴクホングウシダが群生していました。
・
シロヤマシダ
島内の低地から中流域まで普通に見られました。畑の端のウエットな林や中流域の渓谷沿いのウエットな林などで群生していました。大きな個体は2m近くに成長。
①シロヤマシダ
②シロヤマシダ、葉身
セイタカナチシケシダ(セイタカシケシダ×ナチシケシダ)
セイタカシケシダとナチシケシダの雑種と推定される。山地の低部~上部まで広く見られる。セイタカシケシダに似て葉の表面は微毛が生えやや白っぽい緑色。葉身の幅・長さとも大きい。ある程度2形を示す。ナチシケシダに似て包膜の辺縁は激しくほつれる。
標本2
①セイタカナチシケシダ
②セイタカナチシケシダ、胞子のう群
ジュウモンジシダ
山地の中部~上部にかけての渓谷沿いやウエットな火山砂礫質の林床に生育。
・
ノコギリシダ
渓谷沿いやウエットな林床でときどき見られる。
ノコギリシダ (上左、上右)
ノコギリシダ、羽片 (上左)
ノコギリシダ、胞子のう群 (上右)
・
葉形の変わったノコギリシダかアカメクジャク(ノコギリシダ×イヨクジャク)
アカメクジャク(ノコギリシダ×イヨクジャク)の可能性もあるが胞子を調べていないのでよくわからない。ノコギリシダとイヨクジャクの雑種と推定されます。ノコギリシダと共に観察しました。葉の質は硬く、イヨクジャクのもつ草質的な感触はありませんでしたのでアカメクジャクでよいのかどうか不安が残ります。観察された個体群は羽片の下側も浅~中裂し、羽片の中央で幅が広いなどイヨクジャクの特徴が見られます。
①葉形の変わったノコギリシダかアカメクジャク
②葉形の変わったノコギリシダかアカメクジャク、羽片が波打つ個体
③葉形の変わったノコギリシダかアカメクジャク、葉の色はノコギリシダよりの淡く黄緑色
④葉形の変わったノコギリシダかアカメクジャク、羽片
⑤葉形の変わったノコギリシダかアカメクジャク、胞子のう群
・
サイゴクホングウシダ
(1)渓谷の岩壁に群生するサイゴクホングウシダ
(2)サイゴクホングウシダ、胞子のう群
・
オニクラマゴケコウズシマクラマゴケ
八丈島ではオニクラマゴケとコウズシマクラマゴケの2種類が見れるそうです。オニクラマゴケにくらべるとコウズシマクラマゴケは少ないそうです。
(1)(2)オニクラマゴケコウズシマクラマゴケ
タチクラマゴケ
三原山の山地中~上部の林縁の崖面や八丈富士内の明るい林床の火山砂上で生育。胞子のうをつけた側枝は立ち上がり途中で枝分かれし分岐した枝にも胞子のうをつけ、胞子のう穂の形態はとらない。
(1)タチクラマゴケ
(2)タチクラマゴケ、胞子のうをつけた側枝は立ち上がり途中で分岐する
オオキジノオ
オオカナワラビ
オオカナワラビ、小羽片(上左)
オオカナワラビ、胞子のう群(上右)
オオカナワラビ(最下羽片未発達・葉身下部小羽片全縁・包膜有毛) [#cab8e562]
最下羽片が発達しないオオカナワラビ
特徴は①最下羽片はあまり発達しない。②下部羽片では下側小羽片は鋸歯が無く全縁。③包膜上に短い毛が生える。
最下羽片が発達しないオオカナワラビ
最下羽片が発達しないオオカナワラビ、羽片(上左)
最下羽片が発達しないオオカナワラビ、包膜(上右)
・
イヌタマシダ
山地内、洞窟(芋穴?)入口やウエットで薄暗い岩壁の崖から垂れ下がって生育することが多い。大きさは15~40㎝。
(1)イヌタマシダ
(2)イヌタマシダ、若い包膜
コウヤコケシノブ
ウエットな岩壁に群生する。海の近くの渓谷~山の上部の岩壁まで広く見られる。胞子のう群は葉身の先端につける場合と葉身の中につける場合がある。
(1)コウヤコケシノブ、葉身の先端に房状に胞子のう群をつける個体
(2)コウヤコケシノブ、葉身の途中の裂片の先に胞子のう群をつける個体
ウチワゴケ
海岸沿いの渓谷~山の上の岩壁まで広く見られる。
中流域の滝周辺で
中~上流域の滝周辺のシダを紹介します。滝までの登山道ではいろいろなシダを観察することができました。滝壺の周辺は特殊な環境で、日差しは強いのですが常に滝からの風や水しぶきがかかるウエットな岩場・岩壁です。この岩場や切り立った岩壁に以下の3種の小さなシケシダの仲間がまとまって生育していました。コシケシダ(ナチシケシダ4倍体)・シケシダ・コサツマシケシダ※仮称(コケシダ×シケシダ)の3種です。コサツマシケシダを含めどのシダもまだ胞子のようすを観察できていません。これら3種とも渓谷沿いの岩場という生育環境の影響のためか全て小形でした。
そのほかミズスギ、ユノミネシダも見られました。近くでは硫黄の採掘がおこなわれていた跡があり今でも硫黄が見られるそうです。渓谷や滝の周辺の疎林や岩場ではオニクラマゴケコウズシマクラマゴケやコシダやウラジロの群生も見られました。
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コシケシダ(ナチシケシダ4倍体)
シケシダ
(1)シケシダ(上左)
(2)滝のそばの岩壁に生育するシケシダ(上右)
コサツマシケシダ(コシケシダ×シケシダ)※仮称
※まだ胞子は確認できていません。コシケシダ(ナチシケシダ4倍体)とシケシダの雑種と推定されるのでサツマシケシダとは異なる名前を付けたほうが良いと思います。ここではコサツマシケシダと仮称します。
(1)滝のそばの岩場に群生するコサツマシケシダ
(2)コサツマシケシダ、胞子嚢群
ユノミネシダ
コシダ
コシダやウラジロが風化した溶岩の崖に群生していました。
コシダ
山の裾野や海岸付近の疎林で
海岸近くの森ではハチジョウカグマ、オオイタチシダやナンカイイタチシダ、ハチジョウシダ、シチトウハナワラビ、ヘラシダ、イノデの仲間、カツモウイノデなどが見られました。乾燥気味の海岸近くの森は植生に乏しくナチシダ、ヒメワラビ、オオイタチシダ、ヤマイタチシダ、ナンカイイタチシダなどのイタチシダの仲間が見られました。イノデの仲間はイノデ・アスカイノデ・ミウライノデが見られました。ハチジョウカグマ・カツモウイノデはいたるところで見られました。ハチジョウカグマはややウエットなところでは大きいものでは3m近くの葉を広げていました。
林縁の、火山灰が粘土化したような明るい崖にはハチジョウヒメムカデクラマゴケ(仮称)がみられました。
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オニヤブソテツの仲間C
海岸周辺の中低木の海岸林林床に生育。40~50㎝程度で、葉は厚く光沢あり、鋸歯がある。葉身下部の羽片は幅がありそれほど短縮しない。包膜白色。
(1)オニヤブソテツの仲間C
(2)オニヤブソテツの仲間C、葉身
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ハチジョウヒメムカデクラマゴケ※仮称
ヒメムカデクラマゴケに似ていますが2点ほど様子が異なるところがあります。一つは、腹葉・背葉の辺縁の長い毛について。腹葉・背葉の辺縁には長い毛が粗くつきますが琉球列島産のヒメムカデクラマゴケの腹葉では前側にしか長い毛がつきませんが、八丈島産の個体では腹葉の両側に長い毛が確認できます(画像がピンボケですみません)。2つめは胞子葉の形態について。琉球列島産では胞子葉は2形を示すだけですが、八丈島産では胞子のう穂の下のほうは2形を示し、上部はほぼ2形を示さず細かく尖った葉をまとまって棒状に伸ばします。
ハチジョウヒメムカデクラマゴケ(※仮称)の特徴:①葉(腹葉)の大きさは1.0~1.5㎜、クラマゴケの1/2程度。主茎や側枝の茎も非常に細い。②背葉・腹葉はやや偏った卵形で、先は鋭頭で先端はノギ状に伸びる。③腹葉・背葉の辺縁には小さな鋸歯があり長い毛が粗くはえる。葉の前側・後側の両側に生える。④背葉の辺縁には明瞭な白膜がある。⑤胞子のう穂を形成。胞子のう穂の下部の葉は2形を示し細長いお椀状で背葉は腹葉よりも幅が広く見え徐々に尖り、腹葉はやや急に狭くなり尖る。胞子のう穂の上部の葉は短く尖りほぼ2形はなさず棒状になり斜上する(クラマゴケの胞子のう穂のよう)。⑤陽当たりのよいところでは紅葉する。
琉球列島産のヒメムカデクラマゴケをまだ実際に観察したことがありません。胞子葉の形態が八丈島産の個体と同様であればヒメムカデクラマゴケに訂正したいと思います。
ハチジョウヒメムカデクラマゴケ(仮称)(上左)
ハチジョウヒメムカデクラマゴケ(仮称)、背葉の毛および背葉辺縁の白膜(上右)
シチトウハナワラビ
シチトウハナワラビ(上左、上右)
シチトウハナワラビ、裂片(上左、上右)
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ナチシダ
ミウライノデ
アラゲヒメワラビ毛の長いヒメワラビか
(1)(2)アラゲヒメワラビ毛の長いヒメワラビか 、小羽軸や裂片中肋上の毛
ハチジョウシダ
ハチジョウシダ(上左、上右)
ハチジョウシダ、羽軸上の刺(上左)
ハチジョウシダ、胞子のう群(上右)
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ナンカイイタチシダ
乾燥気味の海岸林林床に生育するナンカイイタチシダ(上左)
ナンカイイタチシダ、最下羽片(上右)
山地林床で
丘陵地の稜線や尾根沿いの林床ではキジノオシダ、ヒトツバ、スジヒトツバ、エダウチホングウシダ、数は少ないそうですがシンエダウチホングウシダ、ヘラシダ、ハチジョウカナワラビ、オオイタチシダ(アオニオオイタチtype・ツヤナシオオイタチtype)、イタチベニシダ(ベニオオイタチtype)などが見られました。
山道沿いの洞窟の入口や岩の窪みにはイヌタマシダが見られた。よく似たナガバノイタチシダは樹林下の林床に生育していた。
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トウゲシバ
照葉樹の森やスギ植林地林床で見られる。葉は倒披針形であるが葉の幅には変化がある。地表付近で枝分かれし、立ち上がった根茎はあまり枝分かれしない。
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オニヤブソテツの仲間D 包膜は白いが葉の薄さなど本州のナガバヤブソテツに酷似する。
(1)オニヤブソテツの仲間D
(2)オニヤブソテツの仲間D、葉身上部
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イノデ
山麓から山頂近くまで広い範囲で見られる。
(1)イノデ
(2)イノデ、葉柄
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キジノオシダ
エダウチホングウシダ
(1)エダウチホングウシダ
(2)エダウチホングウシダ、包膜
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シンエダウチホングウシダ
シンエダウチホングウシダ(上左)
シンエダウチホングウシダ、羽片(上右)
スジヒトツバ
ヒトツバ
ハチジョウベニシダ
山麓~山地上部まで観察された。ただし、胞子葉観察していない。ベニシダも生育しているのでオオシマベニシダ(ハチジョウベニシダ×ベニシダ)も一緒に生育していると考えられる。オオシマベニシダ(ハチジョウベニシダ×ベニシダ)はハチジョウベニシダに似るが葉の厚味は中間的。いずれにしても胞子を見なければ正確な判断はできない。
ハチジョウベニシダ、葉身(上左)
ハチジョウベニシダ、羽片(上中)
ハチジョウベニシダ、下部羽片(上右)
標本2
三原山中腹の滝周辺の森で
ハチジョウベニシダ(上左)
ハチジョウベニシダ、下部羽片(上右)
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ベニオオイタチシダ
低山~山地中腹で確認。尾根近くの乾燥気味の照葉樹林林床斜面に生育
(1)(2)ベニオオイタチシダ
ヤマイタチシダ
海岸林林床で見られた。最下羽片後側第1小羽片がやや長めであった。
ヤマイタチシダ%%オオイタチシダ(アツバオオイタチシダtype)%%
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オオイタチシダの仲間
乾燥気味の林床や崖に生育。今回歩いたところでは海岸林林床ではアツバオオイタチシダtypeがよく見られ、ナンカイイタチシダ似のオオイタチシダの仲間も見られた。山地の崖ではアオニオオイタチシダtypeやツヤナシオオイタチシダtypeが観察された。
(1)オオイタチシダ(アツバオオイタチシダtype)ナンカイイタチシダ似のオオイタチシダの仲間
(2)オオイタチシダ(アオニオオイタチシダtype)
アマクサシダ
乾燥気味の林床からウエットな森の道沿いの崖などでちらほら観察された。
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コハシゴシダ
乾燥気味の尾根沿いに生育。
コハシゴシダ(上左)
コハシゴシダ、葉身(上右)
コハシゴシダ、羽片(上左)
コハシゴシダ、胞子のう群は(上右)
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ハチジョウカナワラビ
海岸付近渓谷の林床斜面から山地尾根沿いまで広く見られる。ホソバカナワラビに似るが頂羽片はそれほどはっきりしない。最下羽片下側第1小羽片は発達し、羽片は3回羽状に分かれる。葉の質はゴワゴワと硬く裂片の先は反り返る。
ハチジョウカナワラビ (上左)
ハチジョウカナワラビ、羽片(上右)
ナガバノイタチシダ
樹林林縁の三原山登山道沿いや三原山外輪山内スギ林林床に生育。大きさは45~55㎝。
ナガバノイタチシダ (上左)
ナガバノイタチシダ、最下羽片(上右)
ナガバノイタチシダ、羽軸・中軸の溝(上左)
ナガバノイタチシダ、胞子のう群 (上右)
トウゴクシダ
シシガシラ
マメヅタ
ウラジロ
水辺で
八丈島にも少しだけ田んぼがあるのですが、そこではなにも確認できず、公園の水瓶のなかで、オオサンショウモとサンショウモを観察しました。八丈島ではオオサンショウモも越冬できるようです。
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オオサンショウモ
サンショウモ
民家の周辺で
民家の周りの林縁や林の中、道沿いでは、ナチシケシダ、セイタカナチシケシダ、ヘラシダ、ハチジョウカグマ、カツモウイノデ、ハチジョウシダ、ホシダ、ミゾシダ、ホラシノブなどが普通に見られました。
ヘラシダの群生の中でときどきノコギリヘラシダ(ヘラシダ×ナチシケシダ)が顔を出していました。3~4ヶ所で観察されましたが、この2つの親は八丈島では最も普通に見られ、よく一緒に生えているシダですがその雑種はそんなによく出現しません。
よく除草が行われている陽当たりのよい草地ではコヒロハハナヤスリが見られました。
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カツモウイノデ
カツモウイノデ(上左、上右)
カツモウイノデ、中軸背軸側
カツモウイノデ、葉柄基部および根茎
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ハチジョウカグマ
ハチジョウカグマ、葉身先端(上左)
ハチジョウカグマ、無性芽(上右)
ハチジョウカグマ、葉柄基部鱗(上左)
ハチジョウカグマ、新芽(上右)
ハチジョウカグマ、裂片(上左)
ハチジョウカグマ、胞子のう群(上中)
ハチジョウカグマ、包膜(上右)
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ヘラシダ
ヘラシダは島内の乾燥気味の林縁、林床からややウエット日陰の崖や土手など至る所で見られました。
ヘラシダ(上左)
ヘラシダ、胞子のう群(上右)
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ナチシケシダ
八丈島では最も普通に見られるシケシダの仲間。雑種を作りやすく、いちいち包膜を調べなければ同定は難しい。
ナチシケシダ(上左)
ナチシケシダ、羽片(上右)
ナチシケシダ、胞子のう群(上左)
ナチシケシダ、羽片(上右)
ホラシノブ
ホラシノブ
ミゾシダ
コヒロハハナヤスリ
コヒロハハナヤスリ (上左、上右)
八丈富士、外側で
八丈富士の裾野部分ではタブやヒサカキなどの照葉樹林の鬱蒼とした森がが広がっています。青木ヶ原の樹海よりも成立が新しいのでしようか開拓されていない林床は荒削りの溶岩がそのまま積み重なったような状態です(山の南側)。(現在開拓されたところは大変な労力を注いで作物を作れる耕作地にしたことがうかがえます。)ところどころには溶岩のすき間があり溶岩が流れた跡の洞窟のようになっています。その岩に貼りつくようにナンカクラン、コウザキシダ、マツバラン、高木が茂る林内でやや腐食が堆積している林床ではハチジョウベニシダ、ヒロハノコギリシダ、イノデの仲間、イシカグマなどが生育していました。イシカグマは裏見ヶ滝でも見ましたがそこらじゅうに生えているという感じではなくポツンポツンと生えている状態でした。ところどころスギの植林が見られましたが低地では生長が早くあまりよい材にはならないようです。
八丈富士は標高854mあり、きれいな円錐形の富士山を小さくしたような火山です。山頂に登る途中、山頂に近づくあたりではミズスギやホングウシダが見られました。
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マツバラン
溶岩に着生するマツバラン(上左、上右)
マツバラン、胞子のう群(上左、上右)
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ナンカクラン
コウザキシダ
ヒロハノコギリシダ
ヒロハノコギリシダ(上左)
ヒロハノコギリシダ、葉身先端(上右)
ヒロハノコギリシダ、葉柄基部(上右)
ヒロハノコギリシダ、胞子のう群(上左)
ホングウシダ
八丈富士の上部、樹木の丈が低くなり樹林帯から草本類中心の草原になるあたりから見られる。明るい土手や崖などに草と共に生育。
ホングウシダ
ホングウシダ、羽片(上左)
ホングウシダ、胞子のう群(上右)
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ミズスギ [#ede0b9f
ミズスギ、胞子のう穂
山地上部(三原山・八丈富士)で
八丈富士の山頂には直径およそ400mの外輪山(クレータ)があり、その中に小さいですか高層湿原を有する中央火口丘とさらに深いお椀のような「小穴」と呼ばれるクレータを有します。クレーターの中は丈は低いですがヒサカキを中心とした低木林(萌芽林)言い換えればパイオニア林であり原始林である林が鬱蒼と茂る森が広がります。ヒサカキをメインとしたヒメユズリハやヤマグルマ、タマアジサイなどが生育しています。林内は岩石や樹木には地衣類や何種類かの着生のラン科の植物が生育していました。
三原山は10万年~1万年前に成立、八丈富士にくらべ土壌化は進んでいます。
植林のスギ林(たぶん)ですが外輪山の中に広がり屋久島の1000mあたりの雰囲気でコケの森。範囲は広く、中央火口丘は時間が無くて歩いていません。樹幹・樹上・岩上にはシダの仲間を含め多数の着生植物が生育していました。
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オニトウゲシバ
照葉樹の低木林林内の岩礫地林床や岩壁にコケなどと共に生育。株は地上部でも2~3回枝分かれし末広がりの形状になる。
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ヌカボシクリハラン
三原山外輪山内や八丈富士山麓の照葉樹林内から山頂近くの低木林まで広く見られました。
ヌカボシクリハラン(上左)
樹幹を這いあがるヌカボシクリハラン(上右)
ヌカボシクリハラン、葉の裏側(上左)
ヌカボシクリハラン、胞子のう群(上右)
シシラン
シシラン、葉の表面(上左)
シシラン、葉の裏面(上中)
シシラン、胞子のう群(上右)
不明な大型のDiplazium(ノコギリシダ)の仲間
不明な大型のノコギリシダの仲間
不明な大型のノコギリシダの仲間、中軸および羽片
タカサゴキジノオ
タカサゴキジノオ(上左)
タカサゴキジノオ、葉身(上右)
タカサゴキジノオ、葉身上部(上左)
タカサゴキジノオ、葉身中部(上中)
タカサゴキジノオ、葉身下部(上右)
タカサゴキジノオ、葉身下部の羽片基部(上左)
タカサゴキジノオ、胞子葉の羽片(上右)
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トウゴクシダキノクニベニシダ
(1)トウゴクシダキノクニベニシダ
(2)トウゴクシダキノクニベニシダ 、最下羽片
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アツイタ
ヒロハアツイタ
ウエットな林内、樹幹に着生。葉の大きさは10~18㎝。葉の質はやや柔らかい革質、葉の表面には光沢が無く葉の辺縁には白膜がある。胞子のう群は胞子葉の全面につく。栄養葉・胞子葉は同形。
(1),(2)ヒロハアツイタ
ナンカイヌリトラノオヌリトラノオ
苔むした切り株に群生するナンカイヌリトラノオヌリトラノオ(上左、上右)
ナンカイヌリトラノオヌリトラノオ、羽片(上左)
ナンカイヌリトラノオヌリトラノオ、無性芽(上右)
ナンカイヌリトラノオヌリトラノオ、中軸および羽片(上左)
ナンカイヌリトラノオヌリトラノオ、胞子のう群(上右)
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タニイヌワラビ
スギ林内、コケ類や背の低い林床植生がまばらに生えるきれいな林床にポツンポツンと生育。
タニイヌワラビ(上左)
タニイヌワラビ、羽片(上右)
タニイヌワラビ、葉柄基部の鱗片(上左)
タニイヌワラビ、胞子のう群(上右)
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ツクシイヌワラビ
案内していただいたところではタニイヌワラビと同じところに生育していました。スギ林内、コケ類や背の低い林床植生がまばらに生えるきれいな林床に生育。
ツクシイヌワラビ(上左)
ツクシイヌワラビ、葉柄基部の鱗片(上右)
ツクシイヌワラビ、羽片(上左)
ツクシイヌワラビ、胞子のう群(上右)
ハチジョウウラボシ
オオハイホラゴケ
海岸近くの渓谷に生育するオオハイホラゴケにくらべ大きく25~30㎝はある。中軸の翼の幅は広い。ウエットな岩壁に群生。
(1)オオハイホラゴケ
(2)オオハイホラゴケ、翼状の稜がつく包膜
イワイタチシダ
箱根仙石原同様ウエットな火山性砂礫地では林床に生育。岩壁面にも小さな株は生育しているが、林床では大きく30~45㎝ほどに成長。イタチシダの仲間はイワイタチシダ 以外にヤマイタチシダ・イヌイワイタチシダが見られた。
(1)イワイタチシダ
(2)イワイタチシダ、葉柄
イヌイワイタチシダ
葉の色など外観はヤマイタチシダに似るが葉柄の鱗片はイワイタチシダほど整わないが開出気味につける。イヌイワイタチシダは、胞子数は32個なのでいつか確認してみたい。
(1)イヌイワイタチシダ
(2)イヌイワイタチシダ、葉柄
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シケシダあるいはタマシケシダ(シケシダ×フモトシケシダ)%%
まだ胞子を観察していない。葉にはあっる程度艶があり包膜の辺縁は全縁でシケシダに似ているが、包膜上にまばらに毛が生えている。包膜上の毛はフモトシケシダが関わっている可能性がある。胞子が乱れていればタマシケシダ(シケシダ×フモトシケシダ)と考えられる。
シケシダとタマシケシダはよく似ていることがあり、フィールドでは、森の中で見つけたシケシダはタマシケシダの可能性があり、一応胞子のようすを確認したほうが良い。
ナチフモトシケシダ(ナチシケシダ×フモトシケシダ)
ナチシケシダとフモトシケシダの雑種と推定される。八丈富士噴火口内ではよくみられました。包膜の辺縁が激しくほつれるところはナチシケシダ似。包膜上の毛はフモトシケシダ似。
(1)渓谷の斜面に生育するナチフモトシケシダ
(2)ナチフモトシケシダ、包膜は有毛
ナチフモトシケシダか不明なシケシダの仲間 (フモトシケシダあるいはナチシケシダあるいはナチフモトシケシダ)
八丈富士の中央火口丘の周辺で観察された。八丈島は標高の低いところではナチシケシダやその雑種が多く、このシダは形が整ったシダであるがフモトシケシダあるいはナチシケシダあるいはナチフモトシケシダの可能性がある。
葉の大きさは35~45㎝。葉柄は葉身とほぼ同長、葉柄下部はえんじ色。最下羽片は発達する。包膜の辺縁には細鋸歯があり一部内曲している部分も認められる。包膜上には毛が生えている。
(1)八丈富士中央火口丘内低木林林床に生育するナチフモトシケシダか不明なシケシダの仲間
(2)ナチフモトシケシダか不明なシケシダの仲間、包膜
フモトシケシダ2 包膜の辺縁が内曲する個体
葉の大きさは30~35㎝。葉柄は葉身とほぼ同長、葉柄下部はえんじ色。最下羽片は発達する。包膜はすべてシケシダのように内曲し包膜上には目立った毛は確認できない。標本2は包膜辺縁がすべて内曲するのでコヒロハシケシダの可能性も考えられる。
(1)包膜の辺縁が内曲するフモトシケシダ
(2)包膜辺縁内曲するフモトシケシダ、包膜
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サトメシダ
(1)ウエットなやや明るい林床、高茎草本と共に生育するサトメシダ
(2)サトメシダ、包膜
ホソバイヌワラビ
ウエットな林床に生育。
ホソバイヌワラビ(上左)
ホソバイヌワラビ、葉身(上右)
柄の長い羽片を持つヤマイヌワラビ
ウエットな明るい林床に生育。 本土の個体にくらべると羽片の柄は長い。包膜は短い棒状と馬蹄形が混ざる。包膜の辺縁は著しく裂ける。
ヤマイヌワラビ(上左、上右)
ヤマイヌワラビ、羽片の柄(上左)
ヤマイヌワラビ、中軸上の刺(上右)
ヤマイヌワラビ、胞子のう群(上左)
ヤマイヌワラビ、包膜(上右)
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ヤワラシダ(包膜が辺縁寄りにつくtype)
本土のヤワラシダと同様と思い撮影。胞子のう群は裂片の辺縁寄りについていた。次回行った時には再度詳しく調べてみたい。
ヤワラシダ(包膜が辺縁寄りにつくtype)
ヤワラシダ(包膜が辺縁寄りにつくtype)、胞子のう群(上左、上右)
ヒロハヒメウラボシ
一見ノキシノブの幼株のように見える。上部は樹冠に覆われているがやや明るくそれほどウエットではない切り立った岩壁に着生。植物体全体に褐色の長い毛が生える。
ヒロハヒメウラボシ(上左)
ヒロハヒメウラボシ、胞子のう群(上右)
'高層湿原など湿潤な環境で
中央火口丘近くでは規模は小さいですがオオミズゴケが堆積した湿地を有する高層湿原が広がります。(この高層湿原内は、オオミズゴケが生育するする範囲ごくわずかで、まもなく湿地は終了しそうです)周辺の潅木林はヒサカキやイヌツゲが目につきました。林床にはサトメシダ・ヒカゲノカズラ・ハリガネワラビ・ヒロハトオゲシバ・ホソバイシカグマが生育し、岩場ではオオクボシダ・コケシノブ・コウヤコケシノブ・イワイタチシダ・イヌイワイタチシダなどが見られました。
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コケシノブ
玄武岩質溶岩の切り立った岩壁面に群生。
コケシノブ(上左、上右)
オオクボシダ
ハリガネワラビの仲間八丈島type(中軸には褐色毛密生・胞子のう群は中間・包膜上には長毛と線毛)ハリガネワラビ
中央火口丘付近で観察したハリガネワラビの仲間ハリガネワラビは胞子のう群が中間につく個体が見られました。個体の特徴は葉の色が黄緑色、中軸には褐色の毛が密生。八丈島では普通のハリガネワラビも見られるので詳しく調べる必要があると思います。
ハリガネワラビの仲間ハリガネワラビ(上左)
ハリガネワラビの仲間ハリガネワラビ、葉身(上右)
ハリガネワラビの仲間ハリガネワラビ、葉柄(上左)
ハリガネワラビの仲間ハリガネワラビ、中軸(上右)
ハリガネワラビの仲間ハリガネワラビ、胞子のう群(上左)
ハリガネワラビの仲間ハリガネワラビ、包膜(上右)
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コバノイシカグマホソバイシカグマ
コバノイシカグマホソバイシカグマ(上左)
コバノイシカグマホソバイシカグマ、胞子のう群(上右)
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オニトウゲシバtypeヒロハノトウゲシバ
オニトウゲシバtypeヒロハノトウゲシバ 、頂生する新芽(上左)
オニトウゲシバtypeヒロハノトウゲシバ 、胞子のう(上右)
コウヤコケシノブ
ヒカゲノカズラ
中央火口丘の明るい潅木林の乾燥気味の林床に生育。
ヒカゲノカズラ(上左、上右)
'八丈富士中央火口丘内、2重のクレータの中「小穴」で
2重のクレータの中、最も低いお椀小穴は深く30~40m下ります。底にもヒサカキを中心とした低木林が広がっているようです。お椀の底の中心部には本数は限られますがヤマグルマの大木が純林を形成しています。
いつか歩いてみたいと思います。
一度は八丈島へ
我々シダ仲間3人組はひろちょんが親しくされている宿(希望の村)に宿泊しました。前日、宿のご主人が我々のため早朝、岸壁から大きなカンパチとアカハタを釣り上げごちそうしてくださいました。島の焼酎は香り高くその味は忘れがたいです。そのうちまた必ずシダを見に行きたいと思っています。島の魚、鳥、爬虫類、蝶、虫、きのこ、草花(シダ)を調べに一度はいらしてください。旅情豊かな船旅もいいですが、飛行機だと1時間足らずで着いてしまいます。
なお、またひろちょんが八丈島に行く時に、お願いすれば案内していただけるかもしれません。