セイタカホラゴケ(ハイホラゴケ×オオハイホラゴケ) Vandenboschia kalamocarpa × V. striata
コケシノブ科 ハイホラゴケ属
前回、観察したときには胞子のう群を見つけることができず、とりあえずイズハイホラゴケかとして表記して掲載していた。今回胞子のようすを観察し、胞子のようすから有性生殖種ではなく雑種であることが推定された。羽片が立体的にならず平坦で葉の形が長卵状披針形になるものはセイタカホラゴケ以外にミウラハイホラゴケとイズハイホラゴケ(ミウラハイホラゴケよりも大形になる)であるがどちらも有性生殖種である。(ヒメハイホラゴケとオオハイホラゴケの雑種であるアイハイホラゴケはまだ見たことがありません。葉はセイタカホラゴケよりも多少立体的になるのかもしれません。)
ウエットな切り立った岩壁に生育。葉の大きさは15~20㎝、胞子のう床は包膜よりも長く伸び、1つの胞子のうの中には充実した胞子がわずかに含まれる程度であった。
①切り立ったウエットな岩壁に群生するセイタカホラゴケ (前回2022年12月3日の写真)
①セイタカホラゴケ (前回2022年12月3日の写真)
②セイタカホラゴケ、葉柄 (前回2022年12月3日の写真)
①セイタカホラゴケ、胞子のう床を取り巻く胞子のう群
②セイタカホラゴケ、セイタカホラゴケ、胞子のう床からはずした胞子のう
ヒカゲワラビ Diplazium chinense
メシダ科 ノコギリシダ属
前回はオニヒカゲワラビを観察したが、今回岩屑が堆積した林内の急斜面でヒカゲワラビが群生していた。
岩屑が堆積した林内の急斜面に群生するヒカゲワラビ
イワヤナギシダ Loxogramme salicifolia
ウラボシ科 サジラン属 [#e4c7b79c]
須津川河畔の崖や大きな転石上に生育。
川沿いの崖に生育するイワヤナギシダ
ホソバショリマ Amauropelta beddomei
ヒメシダ科 ハシゴシダ属
前回観察したときに比べ葉が大きく50㎝に達する。胞子のう群は確認できなかった。(前回観察した場所とは1㎞ほど離れている)
イヌワカナシダ(ワカナシダ×オクマワラビ) Dryopteris kuratae × D. uniformis
オシダ科 オシダ属
オクマワラビ(有性生殖種)とワカナシダ(無融合生殖種)の雑種と推定される。ワカナシダやオクマワラビが混生する川沿いで同行の方が見つけられ、観察することができました。胞子の観察では、1つの胞子のう内にわりと大きさ・形が整った胞子が30個程度観察され、無融合生殖種の胞子のようすに似ており、有性生殖種同士の雑種とは異なる表情をしていた。(無融合生殖種の胞子のようすは、多くの場合胞子数は32個・ほうしの大きさ・形は整ったもの~乱れたものまで見られる。また、有性生殖種間の雑種では様々な形態が観察されるが、多くの場合60個程度数えることができる。)
もしかして、葉柄・中軸の鱗片が少ない羽片の切れ込みが深いワカナシダそのものかもしれない。今回は1個体の胞子のようすなので、今後別個体でも胞子のようすを観察する必要がある。
ハコネオオクジャク(オオクジャクシダ×オクマワラビ) Dryopteris dickinsii × D. uniformis
オシダ科 オシダ属
川沿いの樹齢を経たスギ林が広がる森。林床は明るい。オオクジャクシダやイノデ類が優先する中で同行の方が探し出される。周辺にはオオクジャクシダに混じってオクマワラビがまとまって生育していた。
①ハコネオオクジャク、葉柄の鱗片
②ハコネオオクジャク、中軸の林片
①ハコネオオクジャク、羽片・裂片
②ハコネオオクジャク、胞子のう群
ハコネオオクジャクとオクマワラビの比較
①ハコネオオクジャク(左)とオクマワラビ(右)
①オクマワラビ(左)とハコネオオクジャク(右)、葉柄上部~中軸下部の鱗片比較
※ハコネオオクジャクの鱗片の色には幅があり明褐色~黒褐色まで見られる。
①②オクマワラビ(左)とハコネオオクジャク(右)、胞子のう群比較
タカオイノデ(アイアスカイノデ×ツヤナシイノデ) Polystichum longifrons × P. ovatopaleaceum var. ovatopaleaceum
オシダ科 イノデ属
川沿いの樹齢を経たスギ林が広がる森。林床は明るい。オオクジャクシダと共に何種類かのイノデの仲間が生育していた。アイアスカイノデとツヤナシイノデの雑種と推定される。観察時間が限られ十分時間が取れなかったが、ほかにもいくつかの雑種と思われるものが観察された。イノデ類の産地としても興味深いところなので、いつか再訪し時間をかけて観察したい。