葉質が薄く光が透けるヤクシマホウビシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
ウエットな岩壁に群生するヤクシマホウビシダ

前回2024年の観察会に続き荻ノ入川での2回目の観察会でした。まだ歩いていないところを中心に皆さんで歩きました。林床はシカが食べないオオバノハチジョウシダやオオバノイノモトソウ、ナチシダなどが茂りわずかに小さなディプラジウムの仲間が混生する程度でした。林内の大岩や柵などでシカが手だしできないところではタキミシダ・イワヤナギシダ、ベニシダ・トウゴクシダ・イヌイワヘゴ・イブキシダ、イワガネゼンマイなど大形のシダが観察できました。


イズハイホラゴケか Vandenboschia orientalis
コケシノブ科 ハイホラゴケ属

胞子のようすを確認できなかった。イズハイホラゴケと推定されるがセイタカホラゴケの可能性もある。葉は披針形で、大きい葉では葉身だけでも20㎝以上ある。川沿い、日陰の切り立った岩壁に群生している。よく似た仲間にミウラハイホラゴケがあるが葉はイズハイホラゴケよりも小さく葉身15㎝程度。
日陰の切り立った岩壁に群生するイズハイホラゴケか。荻ノ入川 2025年3月22日
日陰の切り立った岩壁に群生するイズハイホラゴケか

イズハイホラゴケか、葉。荻ノ入川 2025年3月22日 イズハイホラゴケか、羽片。荻ノ入川 2025年3月22日
イズハイホラゴケか、葉
イズハイホラゴケか、羽片

イズハイホラゴケか、羽片。荻ノ入川 2025年3月22日 イズハイホラゴケか、羽片。荻ノ入川 2025年3月22日
イズハイホラゴケか、最下羽片
イズハイホラゴケか、小羽片




タキミシダ Cyrtomium macrophyllum
イノモトソウ科 タキミシダ属

照葉樹と夏緑広葉樹の混生林内の大岩の側面(あまりウエットではない)に小さなタキミシダが生育。まだ胞子をつけていない未成株。
林内の大岩の側面に生育する小さなタキミシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
林内の大岩の側面に生育する小さなタキミシダ




ヌリトラノオ Asplenium normale
チャセンシダ科 チャセンシダ属

渓流沿いの薄い腐植が載った日陰の岩上に生育していた。株の周辺には幼株葉見られたが、観察された成株は1株だけ。
日陰の薄い腐植が載った岩上に生育するヌリトラノオ。荻ノ入川 2025年3月22日
日陰の薄い腐植が載った岩上に生育するヌリトラノオ

ヌリトラノオ、葉の先にむかご(無性芽)をつける。荻ノ入川 2025年3月22日 ヌリトラノオ、むかご(無性芽)。荻ノ入川 2025年3月22日
①ヌリトラノオ、葉の先につくむかご(無性芽)
②ヌリトラノオ、むかご(無性芽)

ヌリトラノオ、胞子のう群。荻ノ入川 2025年3月22日
①ヌリトラノオ、胞子のう群




クルマシダ Asplenium wrightii
チャセンシダ科 チャセンシダ属

渓流沿いの日陰の岩壁に群生していた。葉の大きさは70㎝に達する。
渓流沿いの日陰の岩壁に群生するクルマシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
渓流沿いの日陰の岩壁に群生するクルマシダ

クルマシダ、葉身および胞子のう群。荻ノ入川 2025年3月22日
クルマシダ、葉身および胞子のう群




イヌチャセンシダ Asplenium tripteropus
チャセンシダ科 チャセンシダ属

半日陰の苔むした岩上に垂れ下がるようにして生育することが多い。荻ノ入川周辺では時々観察された。
石垣に生育するイヌチャセンシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
石垣に生育するイヌチャセンシダ




ヤクシマホウビシダ Hymenasplenium obliquissimum
チャセンシダ科 ホウビシダ属

葉はコケシノブの仲間のように薄く光が透けて見える。日陰のウエットな崖や岩壁を覆うように生育。場所によっては上から滴る水で覆われている(包まれている)状態の株も見られた。同行の山崎厚氏はずいぶん昔にこの地でヤクシマホウビシダを観察されていて、今回も探し当てられた。その後3か所くらいでよい生育地が確認された。貴重なシダであり写真のみに収めたいシダである。
日陰のウエットな崖や岩壁を覆うように生育するヤクシマホウビシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
日陰のウエットな崖や岩壁を覆うように生育するヤクシマホウビシダ

ヤクシマホウビシダ。荻ノ入川 2025年3月22日 イズハイホラゴケと共に生育するヤクシマホウビシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
①ヤクシマホウビシダ
②イズハイホラゴケと共に生育するヤクシマホウビシダ

ヤクシマホウビシダ、羽片。荻ノ入川 2025年3月22日
ヤクシマホウビシダ、羽片 

ヤクシマホウビシダ、胞子のう群。荻ノ入川 2025年3月22日 ヤクシマホウビシダ、胞子のう群。荻ノ入川 2025年3月22日
①②ヤクシマホウビシダ、胞子のう群




タニイヌワラビ Athyrium otophorum
メシダ科 メシダ属

夏緑性のシダはほとんど確認できない中、渓流沿いや上部を樹冠で覆われた崖などシカが手だしできないところではよく見られました。同行の方からはこの辺りでは過去にツクシイヌワラビが確認されているとのことで、探しましたが見つかりませんでした。
タニイヌワラビ、葉身。荻ノ入川 2025年3月22日
タニイヌワラビ、葉身

岩上、ヘラシダ・コバノカナワラビ・クルマシダ・オオキジノオなどと共に生育するタニイヌワラビ。荻ノ入川 2025年3月22日
渓流沿いの岩上に生育するタニイヌワラビ




ホソバノコギリシダ Diplazium fauriei
メシダ科 ノコギリシダ属

渓流沿いのウエットな崖の上部で小規模な群生を確認。ミヤマノコギリシダよりはウエットな環境に生育。残念なことに胞子のう群の写真を撮影し忘れました。
渓流沿いのウエットな崖に群生するホソバノコギリシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
苔むしたウエットな崖に生育するホソバノコギリシダ

渓流沿いのウエットな崖に群生するホソバノコギリシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
渓流沿いのウエットな崖に群生するホソバノコギリシダ




ミヤマノコギリシダ Diplazium mettenianum
メシダ科 ノコギリシダ属

表土の乏しい岩場、照葉樹を中心とする混生林の急傾斜の林床に広範囲に点在して生育していた。多分シカの侵入が少ないためであろうか。
表土の乏しい岩場の林床に点在して生育するミヤマノコギリシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
表土の乏しい岩場の林床に点在して生育するミヤマノコギリシダ

ミヤマノコギリシダ、葉身。荻ノ入川 2025年3月22日 ミヤマノコギリシダ、葉身裏側。荻ノ入川 2025年3月22日
①ミヤマノコギリシダ、葉身
②ミヤマノコギリシダ、葉身裏側




マルバベニシダ Dryopteris fuscipes
オシダ科 オシダ属

樹冠に覆われたあまりウエットではない道沿いの崖の下に1株生育。小さな株であるが胞子をつけていた。
ウエットではない道沿いの崖の下に生育するマルバベニシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
ウエットではない道沿いの崖の下に生育するマルバベニシダ
シカの食害の影響か大きな株は確認できなかった。

マルバベニシダ、冬芽。荻ノ入川 2025年3月22日 マルバベニシダ、葉柄株の鱗片。荻ノ入川 2025年3月22日
①マルバベニシダ、冬芽
②マルバベニシダ、葉柄下部の鱗片

マルバベニシダ、葉身および羽片。荻ノ入川 2025年3月22日 マルバベニシダ、胞子のう群。荻ノ入川 2025年3月22日
①マルバベニシダ、冬芽
②マルバベニシダ、胞子のう群




ヌカイタチシダ Dryopteris fuscipes
オシダ科 オシダ属

川沿いの岩壁に生育。周辺ににはいくつかの株が確認された。トウゴクシダの小株に似るが胞子のう群は葉身上部にはつけず最下羽片基部を中心につける。
川沿いの岩壁に生育するヌカイタチシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
川沿いの岩壁に生育するヌカイタチシダ

川沿いの岩壁に生育するヌカイタチシダ。荻ノ入川 2025年3月22日
川沿いの岩壁に生育するヌカイタチシダ

ヌカイタチシダ、葉柄は細長く羽片は無柄。荻ノ入川 2025年3月22日 ヌカイタチシダ、胞子のう群は葉身上部にはつけず最下羽片基部を中心につける。荻ノ入川 2025年3月22日
①ヌカイタチシダ、葉身裏側
②ヌカイタチシダ、胞子のう群




ヤノネシダ Lepisorus buergerianus
ウラボシ科 ノキシノブ属

川沿いの石垣ではしばしば観察された。日光や水分等生育環境が良いところでは周辺の灌木の幹に沿って這い上がり地上の栄養葉よりも幅の狭い披針形の胞子葉をつけていた。
渓流沿いの石垣上に生育するヤノネシダ(栄養葉)。荻ノ入川 2025年3月22日
渓流沿いの石垣上に生育するヤノネシダ(栄養葉)

灌木の幹に沿って這い上がるヤノネシダ胞子葉と栄養葉(下右)。荻ノ入川 2025年3月22日 灌木の幹に沿って這い上がるヤノネシダ(栄養葉)。荻ノ入川 2025年3月22日
①②灌木の幹に沿って這い上がるヤノネシダ

ヤノネシダ、胞子のう群。荻ノ入川 2025年3月22日
ヤノネシダ、胞子のう群