武蔵横手駅から久須美坂方面へ皆さんで歩きました。標高は250~300m程度の穏やかな低山。林道沿いは擁壁と深い谷で林床斜面に生育しているシダに近づいて観察できないところもありました。林床植生が豊かな谷筋もいくつかありシカの食害は少ないように思いました。夏緑性のシダにはまだ季節が少し早く新芽が顔を出した程度でした。胞子を確認したいシダなどあり改めてよい季節に歩いてみたいと思います。観察されたシダを紹介します。
ヒカゲノカズラの仲間
ホソバトウゲシバ。
イワヒバの仲間
クラマゴケ、カタヒバ、イヌカタヒバ。
カタヒバ Selaginella involvens
イワヒバ科 イワヒバ属
林内の岩上に群生。イヌカタヒバは人家の周辺に生育。
①カタヒバ、背葉の中肋
トクサの仲間
スギナ。
ハナワラビの仲間
フユノハナワラビ、オオハナワラビ。
ゼンマイの仲間
ゼンマイ、ヤシャゼンマイ。
同行の方の話ではヤシャゼンマイは川沿いの岩場に生育するそうである。
コケシノブの仲間
アオホラゴケ、ウチワゴケ、コウヤコケシノブ。
コウヤコケシノブ Hymenophyllum barbatum
コケシノブ科 コケシノブ属
林内の岩壁に群生。
①林内岩上に生育するコウヤコケシノブ
②コウヤコケシノブ、葉縁には鋸歯がある
アオホラゴケ Crepidomanes latealatum
コケシノブ科 アオホラゴケ属
林内の岩壁に群生。コウヤコケシノブよりもウエットで薄暗いところを好む。
①②林内岩上に生育するアオホラゴケ
③アオホラゴケ、根茎には黒褐色の毛が密生する
④アオホラゴケ、葉には偽脈がある
ウラジロの仲間
ウラジロ。
カニクサの仲間
カニクサ。
キジノオシダの仲間
キジノオシダ、オオキジノオ。
ホラシノブの仲間
ホラシノブ。
コバノイシカグマの仲間
イヌシダ、コバノイシカグマ、フモトシダ、ケブカフモトシダ、イワヒメワラビ、ワラビ。
イノモトソウの仲間
イワガネゼンマイ、イワガネソウ、タチシノブ、イノモトソウ、オオバノイノモトソウ、オオバノアマクサシダ。
オオバノアマクサシダ Pteris terminalis var. fauriei
イノモトソウ科 イノモトソウ属
沢沿いのウエットな林道沿いに生育。
①沢沿いのウエットな林道沿いに生育するオオバノアマクサシダ
②オオバノアマクサシダ、頂小羽片
ホウライシダの仲間
ハコネシダ、クジャクシダ。
シシランの仲間
シシラン。
チャセンシダの仲間
トラノオシダ、コバノヒノキシダ、イワトラノオ、トキワシダ。
トキワシダ Asplenium yoshinagae
チャセンシダ科 チャセンシダ属
沢沿いの苔むした大きな転石上に間隔をあけて群生。
①沢沿いの苔むした大きな転石上に間隔をあけて群生するトキワシダ
②トキワシダ、葉身
ヒメシダの仲間
ゲジゲジシダ、ハシゴシダ、ハリガネワラビ、ホシダ。
この仲間は夏緑性の仲間が多く、ハシゴシダ、ホシダ以外はまだ葉を展開していないせいか確認できず。
コウヤワラビの仲間
イヌガンソク。その他はまだ葉を展開していないせいか確認できず。
シシガシラの仲間
シシガシラ、コモチシダ。
メシダの仲間
シケチシダ、ホソバイヌワラビ。その他はまだ葉を展開していないせいか確認できず。
ホソバイヌワラビ Athyrium iseanum
メシダ科 メシダ属
まだ、芽が伸び始めたばかりで、葉が十分に展開していない。
①芽が伸び始めたばかりホソバイヌワラビ
②ホソバイヌワラビ、新芽
シケシダの仲間
シケシダ、フモトシケシダ。その他はまだ葉を展開していないせいか確認できず。
ノコギリシダの仲間
キヨタキシダ。
カナワラビの仲間
リョウメンシダ、ナンゴクナライシダ、ハカタシダ、オニカナワラビ、オオカナワラビ、シノブカグマ。
シノブカグマ Arachniodes mutica
オシダ科 カナワラビ属
一般に山地上部~亜高山帯でみられるシダ。この辺りはナガバノイタチシダやナチクジャクなど暖地性のシダが多く生育するところである。標高250~300m。スギ・ヒノキ植林地内稜線近くの林床に生育。
①②低山のスギ・ヒノキ植林地に生育するシノブカグマ
⑤シノブカグマ、葉柄
ヤブソテツの仲間
ナガバヤブソテツ、テリハヤブソテツ、ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ、テリハヤマヤブソテツ、ホソバヤマヤブソテツ)
ヤブソテツ(ホソバヤマヤブソテツ) Cyrtomium fortunei
オシダ科 ヤブソテツ属
低地の沢沿いの林床に生育。羽片の色と形が特徴的である。
①ヤブソテツ(ホソバヤマヤブソテツ)
ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ) Cyrtomium fortunei
オシダ科 ヤブソテツ属
ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ)よりもウエットな林床や岩場に生育することが多い。ヤブソテツ(ツヤナシヤマヤブソテツ)よりも葉の質は厚く羽片は大きい。葉の表面の光沢は弱いものから強いものまである。
①ヤブソテツ(テリハヤマヤブソテツ)
イノデの仲間
イノデ、アイアスカイノデ、イノデモドキ、ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)
※アマギイノデかと思われたイノデの仲間は室内会で同定していただきイノデであった。
オシダ属の仲間
ベニシダ、ハチジョウベニシダか、オオベニシダ、キノクニベニシダ、不明なベニシダ、オオイタチシダ(ツヤナシオオイタチシダ、アツバオオイタチシダ)、ヤマイタチシダ、イワオオイタチシダ、イヌイワイタチシダ、ナガバノイタチシダ。
ベニシダハチジョウベニシダか Dryopteris erythrosora
オシダ科 オシダ属
山地の中腹部、スギ・ヒノキ植林地内急斜面。小羽片は波打ち怪しいベニシダであった。ハチジョウベニシダの可能性もある。胞子が成熟する7月頃もう一度訪れて胞子を確認してみたい。
※胞子を確認したところハチジョウベニシダではなくベニシダであることが判明しました。改めて外観だけでの同定が難しいことを実感しました。2022年7月23日
②③ベニシダハチジョウベニシダか、羽片
観察された胞子のようす。2022年7月23日
有性生殖種のハチジョウベニシダではなく、無融合生殖種のベニシダであった。
ハチジョウベニシダではないかと思われたシダの胞子を観察すると1つの胞子のうに30個程度胞子を確認し、無融合生殖種のベニシダと確認できた。
④⑤ベニシダハチジョウベニシダか、1つの胞子のうを壊したようす
葉が厚いミドリベニシダ不明なベニシダ Dryopteris erythrosora f. viridisora
オシダ科 オシダ属
ミドリベニシダか。葉は厚みがあり小羽片の幅はやや広い興味深いベニシダの仲間。葉柄下部には明るい褐色で開出気味やや幅のある披針形のまっすぐな鱗片がついていたのでミドリベニシダとします。胞子のう群は中間。再度訪れた時に、鱗片、胞子なども調べてみたい。
①葉が厚いミドリベニシダ
②葉が厚いミドリベニシダ、葉身
④葉が厚いミドリベニシダ、羽片
⑤葉が厚いミドリベニシダ、胞子のう群
イヌイワイタチシダか Dryopteris saxifragivaria
オシダ科 オシダ属
ヤマイタチシダとイワイタチシダの中間的な形をしている。葉は白緑色を帯びるがイワイタチシダに比べると緑色が強かったり、イワイタチシダに似て鱗片が開出気味についたりするが胞子数は30個程度で無融合生殖種と考えられる。
①イヌイワイタチシダ
②イヌイワイタチシダ、羽片
イワオオイタチシダ Dryopteris subhikonensis
オシダ科 オシダ属
岩場や岩壁に生育するシダ。スギ・ヒノキ植林地内渓谷沿いの岩壁に生育。オオイタチシダアツバオオイタチシダ形に似ているが羽片上部や葉身上部の小羽片はわずかに鋸歯があり鋭く尖る。
①イワオオイタチシダ、葉身
②切り立った岩場に生育するイワオオイタチシダ
③イワオオイタチシダ、羽片
④イワオオイタチシダ、胞子のう群
ナガバノイタチシダ Dryopteris sparsa
オシダ科 オシダ属
谷沿いには多くのナガバノイタチシダが生育していることを確認。生育数の多さからはもっと暖地で見られるような生育状態であった。
①群生するナガバノイタチシダ
②ナガバノイタチシダ
ウラボシ科の仲間
マメヅタ、ミツデウラボシ、ノキシノブ、クロノキシノブ、ヒメノキシノブなどを観察。