岩上に生育するビロウドシダとヒメノキシノブ。2022年11月19日 大仁田山周辺

青梅の上成木から飯能の大仁田山、上直竹上分を経て入間川沿いの唐竹方面まで歩きました。山の北面の斜面を登っている途中ではアズマシライトソウが広く点在していました。関西で見るシライトソウに比べると葉の大きさは1/3~1/4程度でずっと小さく花もかわいいものであろうと想像できました。今回は途中道がはっきりしないところもあり藪漕ぎをしなければならず参加者の皆さんにはご迷惑をおかけしました。





クルマシダ Asplenium wrightii
チャセンシダ科 チャセンシダ属

同行の方がヒノキ林内で生育を確認。シカに食べられたためか、観察された葉よりも大きな葉をつけていたと思われる葉柄が2本残っていた。普通、暖かい地方でみられる種。関東では真鶴や鎌倉でわずかに確認されている。
ヒノキ林林床に生育するクルマシダ。2022年11月19日 大仁田山周辺
①ヒノキ林林床に生育するクルマシダ

クルマシダ、葉身。2022年11月19日 大仁田山周辺 クルマシダ、シカの食害(?)の跡。葉は食べられたのか、葉柄だけを残す。2022年11月19日 大仁田山周辺
②クルマシダ、葉身
③クルマシダ、シカの食害(?)の跡





ヤワラシダMetathelypteris laxaの仲間(サトヤワラシダとヒメヤワラシダ)
ヒメシダ科 シマヤワラシダ属

同行の方がヒメヤワラシダとサトヤワラシダとを注意して探しておられ、今回は根茎のようすを写真に収めることができた。ヒメヤワラシダは山中のウエットな林床に生育しており、サトヤワラシダは人家に近い林縁の林で観察された。ただ、ヒメヤワラシダはサトヤワラシダの小さな株かもしれないので、引き続きこの両者を調べていきたい。
サトヤワラシダ(左)とヒメヤワラシダ(右)の比較。2022年11月19日 大仁田山周辺
①サトヤワラシダ(左)とヒメヤワラシダ(右)の比較

サトヤワラシダ(左)とヒメヤワラシダ(右)の葉身の比較。2022年11月19日 大仁田山周辺 サトヤワラシダ(左)とヒメヤワラシダ(右)の根茎の比較。2022年11月19日 大仁田山周辺
②サトヤワラシダ(左)とヒメヤワラシダ(右)の葉身の比較
③サトヤワラシダ(左)とヒメヤワラシダ(右)の根茎の比較

サトヤワラシダ、根茎には古い葉柄基部(痕)が縦に密に並び、根茎は太くみえる。2022年11月19日 大仁田山周辺 ヒメヤワラシダ、根茎につく古い葉柄基部痕は、間隔をあけてつけ、根茎は細く見える。2022年11月19日 大仁田山周辺
④サトヤワラシダの根茎のようす
⑤ヒメヤワラシダの根茎のようす





オオヒメワラビ Deparia okuboana
メシダ科 シケシダ属

葉の大きさは1m近く大型のシダ。中軸にほ褐色の鱗片が貼りつくようにつく。羽片の羽軸には広い翼がつく。
ウエットな明るい谷に群生するオオヒメワラビ。2022年11月19日 大仁田山周辺 
①ウエットな明るい谷に群生するオオヒメワラビ

オオヒメワラビ、羽片。2022年11月19日 大仁田山周辺 オオヒメワラビ、羽片の翼。2022年11月19日 大仁田山周辺 
②オオヒメワラビ、羽片
③オオヒメワラビ、羽片の翼

オオヒメワラビ、中軸。2022年11月19日 大仁田山周辺 オオヒメワラビ、胞子のう群。2022年11月19日 大仁田山周辺 
④オオヒメワラビ、中軸 
⑤オオヒメワラビ、胞子のう群





イノデの仲間
イノデ、アイアスカイノデ、イノデモドキ、ツヤナシイノデ、ドウリョウイノデ、ハタジュクイノデ、タカオイノデなどが見られました。



ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)Polystichum longifrons × P. polyblepharum
オシダ科 イノデ属

一般的に、大きく育った株が多い。葉はスリムでアイアスカイノデに似る。葉柄の鱗片はイノデに似てやや大きい鱗片を密につける。鱗片の先のほうには栗色が入ることが多い。
ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)、葉身はアイアスカイノデに似て細身である。2022年11月19日 大仁田山周辺
①ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)

葉柄の鱗片はイノデに似てやや大きい鱗片を密につける。2022年11月19日 大仁田山周辺
②ドウリョウイノデ(イノデ×アイアスカイノデ)、葉柄の鱗片





タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ) Polystichum longifrons × P. ovatopaleaceum var. ovatopaleaceum
オシダ科 イノデ属

ツヤナシイノデやアイアスカイノデが混生しているところで観察された。アイアスカイノデに似ているところ、①葉柄下部の鱗片に栗色が入る。②葉身は細長い。③葉の色が濃い緑色。ツヤナシイノデに似ているところ、①葉柄に大きな幅の広い鱗片が混ざる。②中軸下部~中部にかけて幅の広い鱗片がつく。

タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、葉身はアイアスカイノデに似て細身である。2022年11月19日 大仁田山周辺
①タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)

タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、葉柄下部の鱗片。2022年11月19日 大仁田山周辺
②タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、葉柄下部の鱗片

タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、中軸の鱗片。2022年11月19日 大仁田山周辺 タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、中軸の鱗片。2022年11月19日 大仁田山周辺
③④タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、中軸の鱗片

タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、胞子のう群は辺縁寄りにつく。2022年11月19日 大仁田山周辺 タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、胞子のうははじけずに固まっている。2022年11月19日 大仁田山周辺
⑤⑥タカオイノデ(ツヤナシイノデ×アイアスカイノデ)、胞子のう群





ハタジュクイノデ(イノデモドキ×アイアスカイノデ)Polystichum longifrons × P. tagawanum
オシダ科 イノデ属

イノデモドキとアイアスカイノデが混生しているところで観察された。アイアスカイノデににているところ、①葉柄下部の鱗片に栗色が入る。②葉身は細長い。③葉の表面はそれほど凸凹しない。イノデモドキににているところ、①最下~下部羽片の小羽片には耳垂に優先して1~2個の胞子のうが並ぶ(サイゴクイノデの血が入ると耳垂に優先して2~4個が規則的に並ぶ)。②中軸の鱗片の辺縁は和紙を裂いたようにほつれる。hata-seita221205

ハタジュクイノデ(イノデモドキ×アイアスカイノデ)、葉身はアイアスカイノデに似て細身である。2022年11月19日 大仁田山周辺
①ハタジュクイノデ(イノデモドキ×アイアスカイノデ)

ハタジュクイノデ(イノデモドキ×アイアスカイノデ)、葉身下部裏側。2022年11月19日 大仁田山周辺 ハタジュクイノデ(イノデモドキ×アイアスカイノデ)、最下羽片。2022年11月19日 大仁田山周辺
②ハタジュクイノデ(イノデモドキ×アイアスカイノデ)、葉身下部裏側
③ハタジュクイノデ(イノデモドキ×アイアスカイノデ)、最下羽片





ヤマイタチシダ Dryopteris bissetiana
オシダ科 オシダ属

林道沿いの崖に生育。葉柄~中軸の鱗片は葉柄や中軸にまとわりつくようにつく。胞子のう群(包膜)は大きく裂片をほぼ覆い隠すくらいになる。葉の表面は中央で膨らみ辺縁は内曲する。最下羽片下側第1小羽片は最大であるが目立たない。

林道沿いの明るい崖に生育するヤマイタチシダ。2022年11月19日 大仁田山周辺

ヤマイタチシダ、羽片。2022年11月19日 大仁田山周辺 ヤマイタチシダ、羽片。2022年11月19日 大仁田山周辺
ヤマイタチシダ、羽片

ヤマイタチシダ、葉柄下部の鱗片。2022年11月19日 大仁田山周辺 ヤマイタチシダ、葉柄上部の鱗片。2022年11月19日 大仁田山周辺
ヤマイタチシダ、葉柄下部の鱗片
ヤマイタチシダ、葉柄上部の鱗片

ヤマイタチシダ、葉柄下部の鱗片。2022年11月19日 大仁田山周辺 ヤマイタチシダ、葉柄上部の鱗片。2022年11月19日 大仁田山周辺
ヤマイタチシダ、中軸の鱗片

ヤマイタチシダ、胞子のう群は大きい。2022年11月19日 大仁田山周辺
ヤマイタチシダ、胞子のう群





オオベニシダ(小羽片が切れ込むtype) Dryopteris hondoensis
オシダ科 オシダ属

フィールドではあまり見かけない。最下羽片後側小羽片が発達せずあまり切れ込まない型。オオベニシダの1形と思われる。葉柄の鱗片は黒褐色。葉身下部~上部まで小羽片の大きさはあまり変化が少ない。
オオベニシダ。2022年11月19日 大仁田山周辺
①オオベニシダ

オオベニシダ、葉柄。2022年11月19日 大仁田山周辺 オオベニシダ、葉柄の鱗片は黒褐色。2022年11月19日 大仁田山周辺
②オオベニシダ、葉柄
③オオベニシダ、葉柄の鱗片
 




リョウトウイタチシダ Dryopteris kobayashii
オシダ科 オシダ属

生育地は乾燥気味の崖。葉は薄く白青緑色~黄緑色。葉の質は同じイタチシダ類の中では一番薄い気がする。
生育地は乾燥気味の崖に生育するリョウトウイタチシダ。2022年11月19日 大仁田山周辺
①乾燥気味の崖に生育するリョウトウイタチシダ





ノキシノブの仲間
ノキシノブ、クロノキシノブ、ヒメノキシノブ、葉の先が尖ったヒメノキシノブ



葉の先が尖ったヒメノキシノブ Lepisorus onoei
ウラボシ科 ノキシノブ属

葉の先端の形には変化があり鋭く尖るものからあまり尖らないものまで見られる。一般にヒメノキシノブの胞子表面には球状の突起がつくことが多いが、この個体の胞子表面には突起が観察されず、なめらかであった。葉先の形状と胞子表面のようすに関係性が見られるか、もう少し多くの個体観察する必要がある。

岩上に着生する葉の先が尖ったヒメノキシノブ。2022年11月19日 大仁田山周辺
①岩上に着生する葉の先が尖ったヒメノキシノブ

岩上に着生する葉の先が尖ったヒメノキシノブ。2022年11月19日 大仁田山周辺
②岩上に着生する葉の先が尖ったヒメノキシノブ

葉の先が尖ったヒメノキシノブ。2022年11月19日 大仁田山周辺 葉の先が尖ったヒメノキシノブ、裏面。2022年11月19日 大仁田山周辺
③④胞子を観察した株

葉の先が尖ったヒメノキシノブ、胞子数は59個程度確認、大きさ・形も整い有性生殖種と思われる。2022年11月19日 大仁田山周辺 葉の先が尖ったヒメノキシノブ、胞子数は62個程度確認、大きさ・形も整い有性生殖種と思われる。2022年11月19日 大仁田山周辺
⑤⑥葉の先が尖ったヒメノキシノブ、1つの胞子のうを壊したようす

葉の先が尖ったヒメノキシノブ、胞子上面のようす。2022年11月19日 大仁田山周辺 葉の先が尖ったヒメノキシノブ、胞子の中および側面のようす。2022年11月19日 大仁田山周辺
⑦葉の先が尖ったヒメノキシノブ、胞子上面のようす
⑧葉の先が尖ったヒメノキシノブ、胞子の中および側面のようす