ハナネコノメとともに生育するハイホラゴケ。2023年3月19日 愛鷹山東部

富士山の南の麓に寄り添うように聳えている愛鷹山の東部周辺を歩きました。以前愛鷹山周辺で植物を調べておられる方から「愛鷹山は富士山よりも古い山なんですよ」とお聞きしし、生育する植物の種類にも富士山とは違う特徴が見られるかもしれないと思い、興味深く観察することができました。

クラマゴケ Selaginella remotifolia
イワヒバ科 イワヒバ属

定期的に草刈りが行われている林縁の草原に群生していました。この季節、胞子のう穂はまだつけず、主茎につく腹葉の間隔が狭くタチクラマゴケと間違うくらいに似ていましたが、根元の主茎を見ると腹葉葉間隔を空けてつけていたのでクラマゴケと判断しました。
新芽を立ち上げるクラマゴケ。主茎基部の腹葉は間隔を空けてつけている。2023年3月19日 愛鷹山東部
②新芽を立ち上げるクラマゴケ

林縁の草地に群生するクラマゴケ。この季節腹葉は詰まってつけタチクラマゴケに似る。2023年3月19日 愛鷹山東部 
①林縁の草地に群生するクラマゴケ





コケシノブのなかま
林内の岩上や渓流沿いのガレ場でコウヤコケシノブやハイホラゴケの仲間を観察しました。ハイホラゴケの仲間は形態の違い見られましたが、胞子はまだ調べていません。機会を見つけてまた調べてみたいと思います。

ハイホラゴケか Vandenboschia kalamocarpa
コケシノブ科 ハイホラゴケ属

崩れてきた岩が堆積する岩屑地に生育する。根茎には黒褐色の毛が密生する。羽片が立体的にならず葉が平面的でハイホラゴケと思われますが、この仲間は難しく、改めて胞子のようすを調べてみたいと思っています。
扁平な葉を広げるハイホラゴケか。2023年3月19日 愛鷹山東部 岩屑地の切り立った岩壁に群生するハイホラゴケか。2023年3月19日 愛鷹山東部
①扁平な葉を広げるハイホラゴケか
②岩屑地の切り立った岩壁に群生するハイホラゴケか。




コハイホラゴケか(ハイホラゴケ×ヒメハイホラゴケ) Vandenboschia kalamocarpa × V. nipponica
コケシノブ科 ハイホラゴケ属

ハイホラゴケとヒメハイホラゴケの雑種と推定される。根茎には黒褐色の毛が密生する。羽片は波打つように立体的になり重なり合うようになる。ただこれもハイホラゴケと思われるものとよく似ているので、あらためて胞子のようすを観察してみたいと思う。
羽片が波打つように立体的になるコハイホラゴケか。2023年3月19日 愛鷹山東部 切り立った岩壁に群生するコハイホラゴケか。2023年3月19日 愛鷹山東部
①羽片が波打つように立体的になるコハイホラゴケか
②切り立った岩壁に群生するコハイホラゴケか




コウヤコケシノブ Hymenophyllum barbatum
コケシノブ科 コケシノブ属

ハイホラゴケよりもウエットではないところに生育する。根茎には毛が無い。切り立った岩壁や樹幹に群生する。中軸裏側には毛が生える。葉の辺縁や包膜には鋸歯がある。
岩壁に群生するコウヤコケシノブ。2023年3月19日 愛鷹山東部 コウヤコケシノブ、裂片や包膜の辺縁には鋸歯がある。2023年3月19日 愛鷹山東部
①岩壁に群生するコウヤコケシノブ
②コウヤコケシノブ、裂片や包膜の辺縁の鋸歯




エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ) Dryopteris medioxima
オシダ科 オシダ属

※マルバベニシダとして掲載していましたが、エンシュウベニシダに訂正いたします。やや明るいところに生えていたため葉の色は黄緑色で葉の色に惑わされました。葉柄の鱗片の色や形態・小羽片の幅や先端の形状はエンシュウベニシダの特徴を示しています。羽片下部の小羽片は基部が幅広く先端はやや尖り気味でエンシュウベニシダの特徴を示しています。
片側が開けた上部を樹冠に覆われた崖に生育。鱗片は栗色~黒褐色・披針形で軸に纏わりついたり直線的に伸びたりしている。葉は淡緑色~淡黄緑色。胞子のう群は中肋に接するようにつく。
壁や樹幹に群生する。中軸裏側には毛が生える。葉の辺縁や包膜には鋸歯がある。
エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身。2023年3月19日 愛鷹山東部
②エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身

切り立った崖に生育するエンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)。2023年3月19日 愛鷹山東部 
①切り立った崖に生育するエンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)

※マルバベニシダによく似ているが、羽片基部の小羽片の形からエンシュウベニシダと判別できる。
エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉柄基部の鱗片。2023年3月19日 愛鷹山東部 エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉柄基部の鱗片。2023年3月19日 愛鷹山東部
③④エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉柄基部の鱗片

エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身下部。2023年3月19日 愛鷹山東部 エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身下部。2023年3月19日 愛鷹山東部
⑤⑥エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身下部

エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身上部。2023年3月19日 愛鷹山東部 エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身上部。2023年3月19日 愛鷹山東部
⑦⑧エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、葉身上部

エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、胞子のう群。2023年3月19日 愛鷹山東部 エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、胞子のう群。2023年3月19日 愛鷹山東部
⑨⑩エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、胞子のう群

エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、胞子のう群。2023年3月19日 愛鷹山東部
⑪エンシュウベニシダ(オオマルバベニシダ)、胞子のう群




ミドリマルバベニシダマガイ:仮称あるいはマルバベニシダ緑色形
オシダ科 オシダ属

日陰の高く切り立った崖に群生している。一つの崖には15株程度まとまって生育している。葉の大きさは60~80cm(葉柄30~40cm、葉身30~40cm)、葉柄の鱗片は濃褐色~明るい褐色。葉形は披針形でマルバベニシダに似るが、葉は光沢がある緑色。胞子のう群はやや中肋寄り~中間。以前にも愛鷹山南麓でも観察している。マルバベニシダの許容範囲に入るのか、あるいは葉の形・色や胞子のう群の位置から大形のイヌナチクジャクにとするかよくわからないシダである。とりあえずミドリマルバベニシダマガイ(仮称)とした。
切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ。2023年3月19日 愛鷹山東部 
②切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ(仮称)

切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ。2023年3月19日 愛鷹山東部
②切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ(仮称)

切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ。2023年3月19日 愛鷹山東部 切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ。2023年3月19日 愛鷹山東部
③④切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ(仮称)

切り立った崖に15株程度群生するミドリマルバベニシダマガイ。2023年3月19日 愛鷹山東部
⑤切り立った崖に群生するミドリマルバベニシダマガイ(仮称)

ミドリマルバベニシダマガイ、葉柄下部の鱗片。2023年3月19日 愛鷹山東部 ミドリマルバベニシダマガイ、新芽の葉柄下部の鱗片。2023年3月19日 愛鷹山東部 ミドリマルバベニシダマガイ、新芽の葉柄下部の鱗片。2023年3月19日 愛鷹山東部 
⑥ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、葉柄下部の鱗片 
⑦⑧ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、新芽の葉柄下部の鱗片 




4月22日 伊豆 筏場観察会の時立ち寄った時の画像(朝早かったので多少写真の色合いが異なる)
切り立った崖に生育するミドリマルバベニシダマガイ。2023年4月22日 愛鷹山東部 ミドリマルバベニシダマガイ、葉身。2023年4月22日 愛鷹山東部
⑨切り立った崖に群生するミドリマルバベニシダマガイ(仮称)
⑩ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、葉身

ミドリマルバベニシダマガイ、新葉の葉柄は40㎝以上。2023年4月22日 愛鷹山東部 ミドリマルバベニシダマガイ、新葉の中軸には褐色~濃褐色の鱗片が貼りつくようにつく。2023年4月22日 愛鷹山東部
⑪ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、新葉の葉柄
⑫ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、新葉の中軸の鱗片

ミドリマルバベニシダマガイ、胞子のう群。2023年4月22日 愛鷹山東部 ミドリマルバベニシダマガイ、新葉の胞子のう群。2023年4月22日 愛鷹山東部
⑬ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、胞子のう群3asitaka-wakaba20230319
⑭ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、新葉の胞子のう群


栽培個体
ミドリマルバベニシダマガイ、展開したばかりの新葉。2024年9月12日 愛鷹山東部産 ミドリマルバベニシダマガイ、展開したばかりの新葉。2024年9月12日 愛鷹山東部産
⑬ミドリマルバベニシダマガイ(仮称)、展開したばかりの新葉