西武池袋線高麗駅を下車し北側の山へ向かいました。当日、駅では巾着田の曼殊沙華を見に行くのではないかと思われる人も多く見られました。高麗周辺の穏やかな起伏の山地は気候が温暖なせいか、ナラ枯れが進んで多くの見事なナラが何本も倒れている場所も見られました。近いうちに森の植生が変わるようです。
イワヒバの仲間
クラマゴケ、カタヒバなどが生育していました。
林内のうす暗い林床に生育。
カタヒバ Selaginella involvens
イワヒバ科 イワヒバ属
山道沿いの大岩の切り立った側面に生育していた。イヌカタヒバとは外観では正確な区別できないがこのような山の中ではイヌカタヒバの可能性はない。念のためにカタヒバの背葉の中肋をルーペで確認した。
大岩の切り立った側面に生育するカタヒバ
カタヒバ、葉身
コケシノブの仲間
険しい岩場にはいくつかのコケシノブ科の仲間が生育していましたが、確認できませんでした。
ウラジロの仲間
コバノイシカグマの仲間
イヌシダ、オウレンシダ、コバノイシカグマが見られた。
コバノイシカグマ Sitobolium zeylanicum
コバノイシカグマ科 イヌシダ属
コバノイシカグマはシカが食べないそうである。高麗の森だけではないと思うが、この辺りは温暖な気候のせいか旺盛に生育する群生がいくつか見られた。生育する森にはなら枯れにより立ち枯れたコナラと山道をふさぐように倒れた大きなコナラが何本も見られた。
枯れたコナラ林の明るい林床に群でいするコバノイシカグマ
①②枯れたコナラ林の明るい林床に群でいするコバノイシカグマ
ケブカフモトシダ Microlepia marginata var. yakusimensis
コバノイシカグマ科 フモトシダ属
林床内も崖や急斜面に生育するケブカフモトシダ
ケブカフモトシダ、中軸向軸側
③ケブカフモトシダ、葉柄
④ケブカフモトシダ、中軸背軸側
ヒメシダ科のなかま
ヒメワラビ、ミドリヒメワラビ、ハリガネワラビ、ヤワラシダ、ハシゴシダなどが見られま
した。
ミドリヒメワラビ Macrothelypteris viridifrons
ヒメシダ科 ヒメワラビ属
最初、森で出会ったときにはアイヒメワラビ(ヒメワラビ×ミドリヒメワラビ)ではないかと思った。小羽片に柄があるが羽片がしっかりとしてヒメワラビに似ているところも見られた。胞子を観察すると雑種ではなくミドリヒメワラビであった。予想通りにはいかないものである。
ミドリヒメワラビ、羽片
ミドリヒメワラビ、羽片
林道脇に生育するミドリヒメワラビ
③ミドリヒメワラビ、小羽片
④ミドリヒメワラビ、胞子のう群
⑤1つの胞子のうを壊したようす、胞子数は60個程度確認
⑥1つの胞子のうを壊したようす、胞子数は63個程度確認
⑦ミドリヒメワラビ、胞子側面
⑧ミドリヒメワラビ、胞子側面
ハリガネワラビ Coryphopteris japonica
ヒメシダ科 オオハシゴシダ属
屋との奥、元水田跡のようなスギが点在する湿地帯のやや盛り上がった部分に生育。雑種の可能性を考え胞子などを観察した。葉の大きさは100㎝に達し、葉柄の太さは4mm。
スギの根元に生育するハリガネワラビ
ハリガネワラビ、葉身
③④ハリガネワラビ、葉柄
⑤ハリガネワラビ、胞子のう群
⑥ハリガネワラビ、包膜
⑦1つの胞子のうを壊したようす、胞子数は59個程度確認
⑧ハリガネワラビ、胞子画像1側面
⑨ハリガネワラビ、胞子画像2側面
⑩ハリガネワラビ、胞子画像2側面
メシダのなかま
イヌワラビ、ヤマイヌワラビ、ヘビノネゴザ、ホソバイヌワラビ、シケチシダなどが見られました。
ホソバイヌワラビ Athyrium iseanum
メシダ科 メシダ属
ウエットな林床に端正な葉を広げていた。今回、小羽軸上の棘を撮影し忘れた。
ウエットな林床に生育するホソバイヌワラビ
①ホソバイヌワラビ、小羽片
②ホソバイヌワラビ、小羽片裏側
③ホソバイヌワラビ、羽軸裏側および包膜
ホソバイヌワラビ、小羽片
シケチシダ Athyrium decurrentialatum
メシダ科 メシダ属
ウエットな林床に生育する深く切れ込むシケチシダ。葉身下部は2回羽状複葉～深裂、小羽片は中裂する。葉は2形をなしているように見えるがどちらの葉にも胞子のう群がついている。
ウエットな林床に生育する深く切れ込むシケチシダ
①②葉は2形をなしているように見えるがどちらの葉も胞子のう群をつける深く切れ込むシケチシダ
③深く切れ込むシケチシダ、胞子のう群
④1つの胞子のうを壊したようす、胞子数は62個程度確認
⑤深く切れ込むシケチシダ、胞子のう群
⑥1つの胞子のうを壊したようす、胞子数は62個程度確認
シケシダのなかま
シケシダ、ホソバシケシダ、フモトシケシダ、セイタカシケシダ、ヘラシダなどが見られました。
ノコギリシダのなかま
キヨタキシダ、オニヒカゲワラビなどが見られました。
オニヒカゲワラビ Diplazium nipponicum
メシダ科 ノコギリシダ属
やや平坦なウエットなスギ林床に7株ほど生育を確認、点在して生育。葉の大きさは大きい株では1mに達する。
ウエットなスギ林床に生育するオニヒカゲワラビ
②ウエットなスギ林床に生育するオニヒカゲワラビ
③オニヒカゲワラビ、葉柄の鱗片
④オニヒカゲワラビ、胞子のう群
カナワラビのなかま
ホソバカナワラビ、ハカタシダ、オオカナワラビなどが見られました。
ハカタシダ Arachniodes simplicior
オシダ科 カナワラビ属
林内の急傾斜地に生育するハカタシダ
ハカタシダ、胞子のう群
ホソバカナワラビ Arachniodes exilis
オシダ科 カナワラビ属
岩上ややや乾燥気味の林床に群生する。栄養葉の小羽片鋸歯はあるが深く切れ込まない。
林内の稜線近くに群生するホソバカナワラビ
ホソバカナワラビ胞子葉(手前)と栄養葉(後側)
オシダ属のなかま
オシダ、オオイタチシダ、ヤマイタチシダ、ベニオオイタチシダ、イワオオイタチシダ、リョウトウイタチシダ、ベニシダ、キノクニベニシダ、サイゴクベニシダなどが見られました。
オシダ Dryopteris crassirhizoma
オシダ科 オシダ属
スギ植林地、林床内の太い倒木上に大きな成株が2株生育していました。朽ちかけた倒木はオシダが育つのに適した適度な水分と林床の雑草に覆われることから守られたのでしょうか。
林床内の太い倒木上に生育するオシダ
①オシダ、葉柄の鱗片
②林床内の朽ちかけた太い倒木上に生育するオシダ
オオイタチシダ(ツヤナシ型) Dryopteris hikonensis
オシダ科 オシダ属
林道沿いの崖に生育。オオイタチシダ(ツヤナシ型)と思われる。左右の最下羽片後側第1小羽片がクロスしていればアケボノオオイタチシダの可能性があるが、最下羽片後側第1小羽片はクロスしていないので切れ込みの深いオオイタチシダ(ツヤナシ型)と思われる。機会があれば5～6月に再訪し新芽の目立ちの色や包膜の色を確認してみたい。
林道沿いの崖に生育するオオイタチシダ(ツヤナシ型)
②オオイタチシダ(ツヤナシ型)
③オオイタチシダ(ツヤナシ型)、羽片
④オオイタチシダ(ツヤナシ型)、最下羽片
サイゴクベニシダ Dryopteris championii
オシダ科 オシダ属
上部を樹冠に覆われた岩が露出するあまりウエットではない崖に大小の株を合わせて20株ほどがまとまって生育する。
①岩が露出するあまりウエットではない崖に群生するサイゴクベニシダ
②サイゴクベニシダ、葉柄上部および中軸の鱗片
③サイゴクベニシダ、最下羽片の小羽片
④⑤サイゴクベニシダ、胞子のう群
ナガバイタチシダ Dryopteris sparsa
オシダ科 オシダ属
スギ林内の沢沿いの崖面にときどき見られた。1つの山道沿いに続く土手面では群生していた。
山道沿いに続く土手面に生育するナガバノイタチシダ
②山道沿いに続く土手面では群生するナガバノイタチシダ
イノデのなかま
イノデ、アイアスカイノデ、イノデモドキ、サカゲイノデなどが見られました。
サカゲイノデ Polystichum retrosopaleaceum
オシダ科 イノデ属
スギ・ヒノキ林内～林縁の沢沿いに12株程度がまとまって生育していました。葉は1mで艶のない大きな葉を広げていました。中軸には鱗片がウロコのように貼りついていました。
沢沿いに群生するサカゲイノデ
①②沢沿いに群生するサカゲイノデ
③サカゲイノデ、葉柄の鱗片
④サカゲイノデ、中軸の鱗片
⑤サカゲイノデ、羽片
⑥サカゲイノデ、胞子のう群
ヤブソテツのなかま
ヤブソテツ（テリハヤマヤブソテツ、ホソバヤマヤブソテツ、ツヤナシヤマヤブソテツ）、テリハヤブソテツなどが見られました。